捕物

悪ガキと夫婦の溝

千野隆司(ちのたかし)さんはお気に入りの時代小説作家の一人。『札差市三郎の女房』や『江戸仇討模様 永代橋、陽炎立つ』『逃亡者』など、サスペンスに満ちた物語や、江戸の市井をしっかりと描いた作品でバツグンの腕の冴えを見せる。「南町同心早瀬惣十郎...
幕末維新

維新前後と浅田次郎作品

浅田次郎さんの『五郎治殿御始末』を通勤電車の中で読み始めた。浅田さんの作品を読むのは、『壬生義士伝』以来だが、文章を読んでいるうちに、その世界にどっぷり浸れていい。この短篇集には、明治維新という激動期に、自らの誇りにかけて、武士の時代に幕を...
女性

南画と時代小説

乙川優三郎さんの『冬の標(しるべ)』の主人公明世は、東国の八万石のある藩で、大番頭を務める末高家の長女として生まれる。幼い頃から絵を描くことが好きで、十四歳のときに藩内で南画(なんが)を教える青年絵師岡村葦秋のもとに入門する。南画は自由な心...
人物

江戸町奉行と鳥居耀蔵

江戸の町奉行というと、大岡越前守忠相や遠山左衛門尉景元(遠山の金さん)、根岸肥前守鎮衛(『耳嚢』の筆者)が有名。北町奉行だった遠山の金さんと同時代(天保期)に南町奉行を務めた人物に鳥居甲斐守忠耀(耀蔵)がいる。鳥居耀蔵は、天保の改革を断行し...
女性

再生と希望の時代小説

乙川優三郎さんの『冬の標(しるべ)』を読み始めた。乙川さんは、『霧の橋』で第7回時代小説大賞(平成9年)を受賞してデビューして以来、文学性の高い良質な時代小説を発表し続ける作家の一人である。デビュー当時は、マスメディアから「第二の藤沢周平」...