時代小説●文庫新刊情報|2024年8月上旬の新刊(1日→10日)
2024年8月1日から8月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リストです。新刊の各タイトルは、Amazon.co.jpの詳細紹介ページにリンクを張っています。
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今回は、お盆休み前で出版ラッシュ。休みの間だけでは読み切れないほど、読みたい本ばかりです。
ポプラ文庫
相沢泉見さんの『猫と涙と昼行燈 公事宿まんぞく庵御裁許帖』
理不尽に絡まれ奉公先を出ることになった十七歳の香乃。行き場を失くした香乃は、ひょんなことから史郎が手代をつとめる公事宿に転がり込むことに。公事宿とは訴訟を行う人々が逗留する宿で、史郎は訴訟の技術を伝授したり代筆したりしています。
女たらしで昼行燈な史郎ですが、ひとたび人の涙を見れば、切れ者へと豹変します。しかし、まんぞく庵に泊まる客は厄介な公事に加え、ワケアリなようで……!?
温かくて泣ける、ほっこり人情時代小説。
河出文庫
藤沢周さんの『世阿弥最後の花』
「美は、花は……、十方世界を変えましょう――」
永享六年(1434)五月、室町の世を幽玄の美で瞠目させた一人の男が、流罪となりました。 世阿弥元清、七十二歳。 なぜ、咎なくして遠く佐渡へと流されたのでしょうか? そして彼の地でどのように生き、何を見つけたのでしょうか?
室町の都を幽玄の美で瞠目させた天才が最晩年に到達した至高の舞と、そこに秘められた謎に迫る、波乱と奇跡の物語。
小学館文庫
井原忠政さんの『天王寺忠義 北近江合戦心得 (四)』
武田との決戦を終え、晴れて士分となった与一郎。しかし、射手の要である肩を脱臼した上、普請中の安土城を批判したことで、秀吉の勘気を被り評価を落としてしまいます。激高する秀吉をとりなしてくれたのは、彼の実弟である長秀(秀長)でした。与一郎は、武辺者を欲しているという長秀の直臣となることに。
そんな折、一揆勢一万が、わずか五百の兵で天王寺砦に詰めた光秀を包囲しました。救援のため自ら単騎で駆け出した信長を、与一郎と、男装し「弦丸」として家来になった於弦が追います。旧主の仇・信長と共に戦うことになった与一郎、名誉挽回なるでしょうか!?
文春文庫
大島真寿美さんの『結 妹背山婦女庭訓 波模様』
江戸時代も半ばを過ぎた道頓堀には芝居小屋がひしめき合っていました。近頃は歌舞伎芝居に押され、往時の勢いはないものの、「道頓堀には、お人形さんがいてこそ、や」。人形浄瑠璃に魅せられ、人形浄瑠璃のために生きた人々の喜怒哀楽と浮き沈み、せわしなくも愛しい人間模様を生き生きと描く群像時代小説。
第161回直木賞受賞作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の続編。
佐藤賢一さんの『最終飛行』
第二次世界大戦下のフランス。売れっ子作家のサン・テグジュペリは飛行士として活躍。しかし、パリがナチスに占領されるとアメリカへと亡命し、その苦悩の中で『星の王子さま』を書きました。
やがて、念願の偵察飛行任務に復帰が叶いますが……。
困難な時代の中で葛藤しながらも、信念を貫き行動し続けた姿を鮮烈に描く長編。
光文社文庫
佐々木功さんの『天下一のへりくつ者』
天正一八年五月、小田原城は豊臣秀吉の大軍勢に包囲されていました。北条家にもはや打つ手はありません。当主・氏直は腹を切る覚悟を固めますが、三代目氏康以来の重臣・板部岡江雪には大逆転の秘策がありました。僧形の異才は持ち前の弁舌を武器に、絶体絶命の氏直を天下人にすべく暗躍します。天下一のへりくつ者は、乾坤一擲の大勝負に勝てるのでしょうか!? 迫真の筆致で描く戦国絵巻。
有馬美季子さんの『恵む雨 はたご雪月花(七)』ある時、江戸の隅田川沿いにある旅籠〈雪月花〉にちょっと変わった客が現れました。やたらと無理な注文ばかりを言う客に、ついには女将の里緒は宿泊代は返すので、出ていってくれるように強く言います。しぶしぶ客はおとなしくしていて帰っていきましたが、それから少し経って、<旅籠番付>が売り出されると、<雪月花>の者たちは仰天しました。雪月花の点数が非常に悪かったのです。「まず女将がなっていない」というようなことも書かれてあり、落ち込む里緒。と、ある日、文句ばかりを言っていた件の客が殺されているのが発見されました。疑われるのは、<番付>に悪く書かれていた者ということになり、里緒にも疑いが向けられます。はたして、真相は……。江戸の風情と料理、それに人情がたっぷり詰まった好評シリーズ第7弾。
西川司さんの『罪の殘骸 峰打ち同心 千坂京之介事件帖』
頭脳明晰かつ剣術の達人。錦絵から飛び出てきたような男ぶり。定町廻り同心の中で手柄の数も町人たちからの人気も群を抜いていました。そんな京之介にも弱みがあります。それは、幼馴染みの志乃と、血を見ると吐き気がすること。“華のある”時代小説の同心ヒーロー、京之介が、深川の重蔵ら岡っ引の力を借りて、江戸の難事件・怪事件を“峰打ち”で解決します。
「深川の重蔵捕物控ゑ」シリーズのもう一人のヒーローを主人公にする新シリーズ。
諸田玲子さんの『きりきり舞いのさようなら』
文政の大火で焼け出された十返舎一九の一家。大混乱のなか近所の住人から押しつけられた老婆と共に、一九の親友・葛飾北斎の借家に仮住まいすることになりましたが……。盗難騒ぎが勃発したかと思えば幽霊が出たと大騒ぎ。男たちは大家の代理人だという美女・おつやに夢中のようで――。一九の娘・舞のきりきり舞いの日々は今日も続く。人気シリーズ、これで一区切りの第4弾。
双葉文庫
千野隆司さんの『おれは一万石(三十) 民草の激』
洪水で崩れた深川洲崎の石垣普請の入札にまつわる普請奉行と岩槻屋の不正を暴いたものの、御手伝普請のための費用がいまだ足りぬ、高岡藩井上家当主の正紀たちは、窮地に追い込まれます。一方、市中では米問屋の売り惜しみによる米価の高騰で、民衆の不満が高まっていました。打ち毀しさえ起きかねぬ不穏な気配の中、正紀たちは改易の危機を無事乗り切れるのでしょうか!? 注目の第30弾。
芝村凉也さんの『北の御番所 反骨日録(十一) 霧の中』
朋輩である来合轟次郎の妻・美也の懐妊を祝う酒宴の後、隠密廻り同心の裄沢広二郎が姿を消しました。その知らせを受け、北町奉行所の廻り方総出で裄沢失踪の究明が始まりましたが、その行方は杳として知れないまま。裄沢は誰に襲われ、なぜ拐かされたのでしょうか!?
そんな折り、江戸湊を臨む南品川猟師町で一杯飲み屋を営むお縫の許に、記憶を失った身許不明の男が担ぎ込まれる……。書き下ろし痛快時代小説、大人気シリーズ第11弾。
稲葉稔さんの『へっぽこ膝栗毛』
御蔵前の札差「小泉屋」の跡取りの新兵衛は、放蕩三昧で気ままな日々を過ごしていました。ある日、両親に縁談の話を持ち掛けられる新兵衛でしたが、まだ身を固めて家を継ぐ気はなく、縁談を保留し、後学のためと称して諸国を巡る旅に出ました。
馴染みの太鼓持ちの和助と、訳ありげな用心棒の稲妻五郎と、まずは東海道で箱根に向かう新兵衛ですが、行く先々で様々ないざこざに巻き込まれ……。笑いあり、涙ありの大注目シリーズ、堂々開幕。
朝日文庫
細谷正充編さんの『朝日文庫時代小説アンソロジー ゆるし』
たった一つの誤解からすれ違う大店の夫婦(「女、ふたり」)、集金した金を持ったまま消えた紙問屋の長男と店を守るその弟(「まききら」)、江戸から駿府に向かう船に乗り合わせた旧幕臣とその家族(「船出」)など5編。あさのあつこ、梶よう子、藤原緋沙子らの傑作短編を集めた時代小説アンソロジー。
時代小説文庫
森明日香さんの『写楽女』
寛政六年の春。地本問屋「耕書堂」に住み込みで奉公している女中のお駒は、店主・蔦屋重三郎のもと、日々忙しく働くある日、店の中に入っていく長身の男を見かけました。その男は、写楽という蔦屋が抱える新しい絵師。
写楽の役者絵が店に並ぶと、今まで誰も見たことのない絵に、江戸中が沸きました。讃辞と酷評入り混じる中、突然重三郎に呼ばれたお駒は、次に写楽が描く絵を手伝ってほしいと言われ……。
第十四回角川春樹小説賞受賞作、書き下ろしの外伝を加え、待望の文庫化。
祥伝社文庫
吉森大祐さんの『おやこ酒 大江戸墨亭さくら寄席』
前座の噺家小太郎は、仙遊亭さん馬師匠の屋敷で騒ぐ怪しい男を見かけました。紋次は、幼馴染の代助とその妹お淳を捨てた父でした。子どもが奉公に出たことが気に食わず、理不尽にも銭を貰おうとしたのでした。さらに紋次は十手持ちが出張る程の乱闘騒ぎを起こし、お淳を女衒に売ったことが露見しました。小太郎は男の責任としてお淳を守ろうとしますが……。
『青二才で候』で第1回いきなり文庫! グランプリを受賞した著者による、落語時代小説第2弾。
夢枕獏さんの『JAGAE 織田信長伝奇行(上・下)』
織田信長は十幾つの秋、不可思議にも牛をひと呑みにする、飛び加藤なる漢と出会いました。以来、信長は奇怪なあやかしどもに向き合うたび、それを明らかにしてきました。数え六つの幼き松平竹千代と、河童を捕らえんとした折にはともに淵に入ることもしました。やがて濃姫を妻に迎え、妖刀あざ丸の祟りを確かめた信長は、父の死に臨み、ついに来世への疑いを口にしたのでした。
河童、妖刀、大蛇、バテレンと法華、信玄の首……、UMA(未確認動物)の探索者であり、合理主義者だった信長を描く、戦国伝奇ロマン。
PHP文芸文庫
宮部みゆきさんの『子宝船 きたきた捕物帖(二)』
江戸で噂の、「持つ者は子宝に恵まれる」という宝船の絵。しかし、赤子を失ったある家の宝船の絵から、なぜか弁財天が消えたといいました。
時を置かずして、北一もよく知る弁当屋の一家三人が殺されました。現場で怪しげな女を目撃した北一は、検視の与力・栗山の命を受け、事件の真相に迫っていきます。
謎解き×怪異×人情が愉しめる、人気捕物帳シリーズ第2弾。
徳間文庫
鈴木英治さんの『戦国鉄砲異聞 義信を奪還せよ』
武田との同盟の証として信玄の嫡男・義信に嫁いだ今川義元の娘・日奈姫。その供侍として甲斐に付き従ってきた由比藤弥之助は鉄砲の腕を見込まれて指南役となり、やがて義信の小姓となります。
桶狭間の戦いで義元が討ち死にしたのを機に駿河を我がものにしようとする信玄。妻の生家を守ろうと反対する義信。父子の不仲は決定的になっていく中で、義信は父を亡きものにしようとするが、逆に謀反の疑いで東光寺に幽閉されます。
弥之介は旧臣の長坂清四郎勝繁、曽根周防守昌清らと義信を救い出そうとするが失敗、ただひとり生き残り……。
戦国冒険活劇スタート。
坂井希久子さんの『髪結いお照 晴雨日記 同業の女』
ある髪結いの死体が見つかりました。その骸はお照が同業であると告げ口した女らしく……。
女髪結いが咎められる世。生業を明かされたことを恨んで殺したのではないかと、お照は人殺しの濡れ衣を着せられてしまいました。
疑いを晴らしたければまことの下手人を捜すよう同心に命じられたお照。その命令には何か裏がありそうで……。
己のため、無念のうちに命を落とした者のため、お照は江戸の町を奔走します。
スパイ×謎解きの新シリーズ、開幕。
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