時代小説●文庫新刊情報|2023年8月上旬の新刊(1日→10日)
2023年8月1日から8月10日の間に、文庫で刊行される時代小説の新刊情報リストです。新刊の各タイトルは、Amazon.co.jpの詳細紹介ページにリンクを張っています。
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PHP文庫
篠綾子さんの『藤原道長・王者の月』
摂政関白に手の届きそうな家に生まれたからには、自分もそうなりたいと思う道長ですが、兄たちや同じ藤原氏の同世代のライバル・伊周たちがいました。しかし、姉・詮子や、左大臣の娘・倫子、「打臥」という巫女の導きによって、道長は「運」をつかんでいきます。
流行り病があっけなく身近なものたちの命を奪っていくが、道長は「知恵と運」で着々と昇りつめ、ついに一家三后を果たします。野望を結実させるまでの日々を、道長を取り巻く人びとの人生とともに鮮やかに描く長編小説。
文春文庫
岡本さとるさんの『父子船 仕立屋お竜』
表の顔は腕のいい職人、裏の顔は悪党を地獄へ案内する武芸の遣い手という主人公お竜。今回はパートナーの井出勝之助がかつて肌を交わした女性と再会し、自分に子供がいることが告げられます。驚きつつも喜びを隠せない勝之助ですが、その裏には悪党どもの悪だくみが……。痛快さとジーンと胸を打つ人情味が癖になるシリーズ第4作。
青山文平さんの『江戸染まぬ』
旗本の次男坊で部屋住みの主人公。武家であらねばならぬ、などとは思ってはおらず、堅物の兄が下女に好意を寄せているのを見て取って、わざと下女にちょっかいを出そうとします。が、気づくと女は身籠っていました。しかも父親は、隠居の祖父だと。六十九歳の老人に女で負けた主人公がとった行動は……。人生を必死に泳ぐ男と女を鮮やかに描き出す傑作短編、全7編収録。
ポプラ文庫ピュアフル
峰守ひろかずさんの『少年泉鏡花の明治奇談録』
時は明治21年。古都・金沢で働く人力車夫の義信は、英語を学ぶために訪れた私塾で、寄宿生ながら英語を教える風変わりな美少年・泉鏡太郎(のちの泉鏡花)と出会います。高い受講料に断念しようとする義信に、鏡太郎はあるものを提供することで受講料を免除にすると持ち掛けました。
それは”怪異の噂”を持ってくること。文豪・泉鏡花の少年時代を綴る、明治怪奇ミステリー。
時代小説文庫
上田秀人さんの『陽眠る』
大政奉還の後、鳥羽伏見の戦いに敗れはしましたが、徳川慶喜は薩長への徹底抗戦を主張、幕軍は意気軒昂でした。オランダで建造された軍艦〈開陽丸〉の艦将・榎本釜次郎武揚も「ここからが海軍の出番」と自負。しかしその夜、慶喜は開陽丸で江戸へ逃げてしまいます。失望した榎本は、副艦将・澤太郎左衛門、大坂城から持ち出した十八万両とともに開陽丸ごと脱走。蝦夷地を開拓し旧徳川家臣の新天地とすべく、北へと向かいます。
無念の開陽丸と男たちの軌跡を描き切る、渾身の歴史小説。
PHP文芸文庫
宮本昌孝さんの『天離り果つる国(上)』、『天離り果つる国(下)』
飛?白川郷。そこに織田信長の魔の手が迫るところから物語は始まります。
金銀と、鉄炮火薬に欠かせない塩硝という宝の眠る里を我が物にしようと企むのは、織田・上杉・本願寺……。そんななか、信長によって天才軍師・竹中半兵衛の愛弟子・七龍太が白川郷に送り込まれました。
“天空の城”と言われる帰雲城に拠って白川郷を治めるのは、内ケ嶋氏理。美しき里に魅せられた七龍太は、領民の平和な生活を守るため、信長の命に反し、氏理の姫紗雪とともに立ち上がります。『この時代小説がすごい! 2022年版』で単行本第1位となった「戦国エンタテインメント」。
泉ゆたかさんの『幽霊長屋、お貸しします(二)』
読売の種拾いとして働くお奈津は、とある事件を通じて知り合った“事故物件”専門の家守(不動産屋)・直吉の力を借りながら、江戸の幽霊騒動に関わっていきます。心中事件の真相、国じゅうの幽霊話を集めているという怪しい男・七五郎との出会いなど、人と霊の巡り合わせを追う中で、直吉の両親が行方不明になった事件の手がかりを見つけますが……。「事故物件×時代小説」シリーズ第2弾。
双葉文庫
佐々木裕一さんの『新・浪人若さま 新見左近【十四】-乱れ普請』
左近に窮地を救われた縁で、甲府藩に召し抱えられた坂手文左衛門が桜田の上屋敷の修繕を差配すべく、国許から出府してきました。張り切る文左衛門ですが、旧知の権八に会うため町に出た際に、手抜きと思しき普請中の建物を見咎め、大工たちと悶着を起こしてしまいます。この一件が思わぬ騒動に発展し……。左近の葵一刀流が悪を斬る、大人気時代シリーズ第14弾。
芝村凉也さんの『北の御番所 反骨日録 【八】-捕り違え』
用部屋手附同心の裄沢広二郎は、小者の三吉から、御用聞きによる無道な捕縛の目撃譚を聞かされます。その御用聞きを使っているのは、かつて隠密廻りに登用され、その後、定町廻りから臨時廻りとなった安楽という男だと。
同輩の室町左源太から、安楽の人となりを聞いた裄沢は、安楽より出された入牢証文発行申請を手許に留め置き、一計を案じました。痛快奉行所小説シリーズ第8弾。
千野隆司さんの『おれは一万石(26)-国替の渦』
酒造額厳守の触れが出されているなか、天領の村から手に入れた二升のどぶろくによって窮地に追い込まれてしまった高岡藩井上家。背後に沓澤らの企てがあったと証し立てしたことで減封こそ免れたものの、触を破った事実は消えず国替えの話が持ち上がります。
最大の危機を迎えた井上家の運命は!? 藩主正紀は、前巻『不酔の酒』から続く問題を解決をできるのでしょうか?
祥伝社文庫
辻堂魁さんの『母子草 風の市兵衛 弐』
還暦を前に大店下り酒屋の主・里右衛門が病に倒れました。店の前途もさることながら、 里右衛門の脳裡を掠めたのは、若き日に真心を通わせた三人の女性のことでした。唐木市兵衛は、里右衛門から数十年も前の想い人を捜し出し、現在の気持ちを伝えてほしいと頼まれます。一方、店では跡とりとなる養子が、隠居しない義父への鬱憤を、遠島帰りの破落戸にうっかり漏らしてしまい……。初老の豪商の真心は届くのでしょうか。感涙の時代小説。
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