「海の日」Special
うだるような暑い日が続き、こんな時は、海にでも行って水に浸かりたくなるのが人情というもの。そこで、久々のベスト10は、「海を感じる時代小説ベスト10」ということで、選んでみた。
周囲を海に囲まれながらも、海を舞台にした時代小説は意外に少ない。というのも、江戸時代のほとんどを鎖国していたからだ。
そのため、この時代、造船術、航海術が停滞してしまった。羅針盤などの計器がないために、陸地を見ながらの操船のため、遠洋への航海は不可能に近かった。北方謙三さんの『林蔵の貌』に、この辺のことが興味深く描かれている。
海洋小説というと、やはり第一人者は、白石一郎さんだろう。『十時半睡事件帖』シリーズも人気だが、氏の持ち味はやはり海をテーマにした作品群。船に関する描写が素晴らしく、また、海のもついろいろな要素が作品の主題とマッチし、傑作ぞろい。実は調整しなかったら、ベスト10中6、7タイトルが白石作品になるところだった。
★おまけ1 勇魚(いさな) C・W・ニコル HARPOON by C. W. Nicol (文春文庫、上下各544円)メッセージボードのところで、少し話題になったので、フォローを。 実は、この本は英語で書かれた時代小説なのだ。村上博基さんが訳されている。この本は、翻訳本や外国文学のコーナーに置かれることが多いので、探すときはご注意を。 幕末、紀州・太地(たいじ)の青年が主人公。太地は、「くじらの博物館」があるように、日本を代表する捕鯨の町だ。 続編として、『盟約』と『遭敵海域』も発行されている。 |
(初出1997/07/08、加筆訂正2011/05/19)