(おんみょうじ・りゅうてきのまき)
(ゆめまくらばく)
[平安]
★★★★☆
♪若き陰陽師安倍晴明と笛の名手源博雅のコンビが平安の闇にはびこる悪鬼、怨霊と立ち向かうシリーズ第六作。「むしめづる姫」というタイトルの話が収録されていて、食指が動く。
今回の見どころは、安倍晴明の師である陰陽師賀茂忠行の息子・賀茂保憲が登場するところだろうか。安倍晴明と並ぶ平安期を代表する陰陽師である。荒俣宏さんの『帝都物語』に出てくる怪人加藤保憲は、賀茂保憲から名前を取ったのではないかと思われる。このシリーズの魅力の一つが、安倍晴明と源博雅の友情である。それ以上に、興味深いのが安倍晴明と市井の陰陽師蘆屋道満との絶妙な距離感である。道満が登場する話はどれも例外なしに面白い。賀茂保憲の登場によって、またまた新しい興味が湧いてきた。
物語●「怪蛇」源博雅は安倍晴明に、藤原鴨忠の屋敷に仕える小菊という女の太股にできたできものから蛇がでてきた話をした…。「首」安倍晴明の師である陰陽師賀茂忠行の息子・賀茂保憲が訪れ、晴明に厄介な一件を頼み込んだ。藤原為成が一条六角堂で妙な首に憑かれてしまい、命を助けてほしいというものだった…。「むしめづる姫」橘実之の娘・露子姫はいろいろなむしを飼って観察している風変わりな姫のために、むし姫とか呼ばれていた…。「呼ぶ声の」満開の桜の樹の下に座して、琵琶を弾いていた藤原伊成は、いずこから聞こえてきた名前を尋ねる声に思わず答えてしまった…。「飛仙」紫宸殿の屋根の上に妖がたびたび出て、宮中で話題になっていた。また、藤原友則の娘が疝気の病になっていたが、藤原兼家からもらった薬を飲んだところ、何かよからぬものが憑いたせいか、高い場所を好むようになってしまったという…。
目次■怪蛇|首|むしめづる姫|呼ぶ声の|飛仙|あとがき