[amazon_image id=”4094048510″ link=”true” target=”_blank” size=”medium” ]斬に処す―甲州遊侠伝 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)[/amazon_image]
斬に処す 甲州遊侠伝
(ざんにしょす・こうしゅうゆうきょうでん)
(ゆうきしょうじ)
[股旅]
★★★★
♪結城昌治さんの時代小説が文庫で蘇り、読む機会を得たことが何よりもうれしい。しかも取り上げているのが、清水の次郎長の好敵手・黒駒の勝蔵というのもいい。
典型的な博徒としての黒駒の勝蔵と、「やくざとしては桁違いに処世感覚がすぐれた」清水の次郎長の対比が面白い。次第に、アンチ次郎長にさせてしまう作者の手腕は見事。あとがきによると、推理小説の書き手である作者が、黒駒の勝蔵に興味を持ち始めたきっかけは、講談や浪曲の清水の次郎長伝中の「石松殺し」に疑問を抱くようになったことからという。時代小説第一作は、『森の石松が殺された夜』である。
やくざの波瀾万丈の半生を描くばかりでなく、幕末から維新にかけての政治状況や、社会の抱える様々な問題を浮き彫りにしていく。
ようやく、股旅もの魅力が少しわかりかけた感じ。
物語●吃安こと竹居の安五郎の賭場で夜っぴて博打をしていた、上黒駒村若宮の名主小池吉右衛門の次男・勝蔵は、戸倉の旦那(堀内嘉平次)に呼び出された。ぐれてしまった勝蔵のせいで、名主のところへ嫁ぐ話が決まっていた姉・きんの縁談が破れたことを聞かされ、この際、援助をするから、人別帳から外れて、一家を構えないかと打診された…。
目次■斬に処す|附「甲州黒駒余聞」|解説 縄田一男