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仕立屋銀次隠し台帳

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仕立屋銀次隠し台帳
仕立屋銀次隠し台帳
(したてやぎんじかくしだいちょう)
結城昌治
(ゆうきしょうじ)
[ピカレスク]
★★★★☆

八重洲ブックセンター(他の書店で見つからないような本が在庫されていて、たまに行くとついいろいろ買ってしまう)で、品薄目の本を漁っていて見つけた。隠れた名作ってところか。

時代は、日露戦争頃ということで、作品の随所に戦争の影響、爪痕が見られるが、太平洋戦争ほど生々しくなく、冷静に読める。幸徳秋水とかも登場してびっくり。

主人公は、スリ全盛時代の明治末期を代表するスリの大親分、仕立屋銀次こと富田銀次。男気があり、頭もよく、度胸があるキャラクターがいい。また、多くのスリが登場するが、その綽名がユニークだ。〔江戸見の辰=江戸見物に出てスリにあい、逆にスリの道にはいったことから〕〔けむ秀=けむりのように酒席からいなくなることから〕〔三食肉=三食肉を食っているとうそぶいていることから〕etc.

警察と持ちつ持たれつで、かつシステマチックな当時のスリの世界が面白い。また、東京の街を縦断する路面電車が描かれていて興味深く、学生の頃住んでいた入谷が作品の舞台になっていて少し懐かしかった。

物語●日露戦争に沸く世相を背景に、スリの大親分仕立屋銀次をめぐる子分たちの心意気と市井の人情の機微を描く推理連作。

目次■第一話 目細の安吉恋の中抜き/第二話 けむ秀と万年小町/第三話 デコ政の死/第四話 死ぬな下駄清/第五話 豚花の千人針/第六話 のんべ勝の薮入り/第七話 猫半の古傷/第八話 南無妙法華の鉄五郎/実録・仕立屋銀次―あとがきに代えて

表紙・扉:白井晟一
カバー画:尾竹々坡筆「年の暮」
時代:明治三十七年(1904年)
舞台:入谷ほか
(中公文庫・524円・83/11/10第1刷、93/8/30第5刷・296P)
購入日:97/8/21
読破日:97/8/24

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