風流冷飯伝
(ふうりゅうひやめしでん)
米村圭伍
(よねむらけいご)
[ユーモア]
★★★★
♪第五回小説新潮長篇新人賞受賞。
江戸の幇間が主人公ということで、落語を地で行くようなユーモアたっぷりの作品。吹けば飛ぶような将棋の駒のような四国の小藩の、〝冷飯ぐい〟(武家の次男、三男坊たち)の日常がほのぼのと描かれていて新鮮だ。新人ながらユーモア時代小説にチャレンジするというのは、すごいことだ。相当な筆力がないとできないことだと思う。
また、装画と扉絵を担当されている柴田ゆうさんの絵が、作品のテーストとマッチしていて何ともいえずいい。
ぼくも江戸に生まれていたら、さしずめ〝冷飯ぐい〟ということになるだろうか。(もっとも武家に生まれるとは限っていないが…)
物語●宝暦十四年春、江戸の幇間(たいこもち)・一八(いっぱち)は、四国讃岐・風見藩の城下にいた。しかし、そこには幇間が巣食うような花街などはなかった…。一八は、城下の古びた飯屋の横手で鶏の数の数えている〝冷飯ぐい〟の飛旗数馬に出会った。そして一八は、数馬から風見藩に伝わる、何とも風変わりな習わしを教えられた…。
目次■その一 桜道なぜ魚屋に嗤われる 冷飯の逃げ足冴える時分どき/その二 あれもうもうたまりませんと娘連 どうもそう見られていては食えやせん/その三 のどかさや凧をあやつる怪物かな しびれさせ峯紫は跡白波/その四 眉に唾たいこ狐に化かされて 藻屑蟹に勝負をいどむ一角獣/その五 短さが哀れを誘うお行列 手毬唄うまらぬ殿は雪隠に/その六 通えどもつれない素振り小町さん もてあます葛籠の底の春画本/その七 解けました源内作の手毬唄 大暴れ冷飯どもが夢の跡/その八 駒が舞う不成の妙手剣四郎 詰将棋はたして詰むや詰まざるや/その九 あれごらん凧のおじちゃん右回り 晴れ舞台降るは喝采花の雨/その十 友がため振るう天賦の舌三寸 入婿の閨を怖がる情けなさ/その十一 嫂の剃刀を研ぐ怖い顔 締められて蛤に泣く俄か医者/その十二 へぼ将棋待った反則咲き乱れ 剣四郎とどめの一手地獄落ち/その十三 鹿島立ち姉の手蹟を懐に だるまさん田沼転んで都詰め/その十四 別盃に乙な合いの手波の音 帰りなん薫風に袖なびかせて
装幀:新潮社装幀室
時代:宝暦十四年
場所:讃岐・風見藩(架空)
(新潮社・1,500円・99/06/20第1刷・264P)
購入日:99/07/03
読破日:99/07/17