山手樹一郎長編時代小説全集=8 江戸名物からす堂(一)
(やまてきいちろちょうへんじだいしょうせつぜんしゅう8 えどめいぶつからすどう1)
山手樹一郎
(やまてきいちろう)
[痛快]
★★★★☆
♪のほほんとした全体の感じがすごくいい。読んでいて気分よくなる。
「落下流水」「近くて遠きは…」作品ごとに接近していくからす堂とお紺の関係が、また楽しい。
収録作品は、「十六文からす堂」(たつみのお紺/紅だすき狂乱/千人悲願/毒薬の行方/母心子心/横恋慕/義理の兄/むっつりのだんな)と「お紺からす堂」(鬼小町/死相の殿様/比丘尼変化/江戸の凶賊)の長編2編12話だが、各話がそれぞれ完結しているので、長編としての連続性があまり感じられない。不思議な体裁だ。続編があるので早く読みたい。
物語●
八辻ガ原の柳の下で、観相手相を営むからす堂に、お紺は占ってもらう。知り合いから小柳町で「たつみ」という小料理屋を買ってもらえないかと持ちかけられていたのだった…。
神がかった観察力と推理力で何でも見通すからす堂には、三年間に千人の人助けをするまで女っ気なしという悲願があった。お色気ムンムンで情熱美人(飯島直子さんをイメージしている)お紺はそんなからす堂に恋焦がれる…。