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黄門さまと犬公方

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黄門さまと犬公方
黄門さまと犬公方
(こうもんさまといぬくぼう)
山室恭子
(やまむろきょうこ)
[江戸入門]

新書というと、堅い本というイメージがあって苦手なのだが、この本は語り口がやわらかくて楽しく読めた。

作者のプロフィールにある、「一九五六年、綱吉に遅れること三百十年にして江戸に誕生。」という記述や2人の殿様へのラブレター風のプロローグとエピローグなど、才気溢れる著者の文体で、古めかしい史料の中から発掘した新見解が楽しめる。

とくに綱吉に対する新評価は、これから忠臣蔵ものを読む際に、大いに参考になるところだ。ぜひ、『堂々日本史』で、映像化して欲しい。

読みどころ●水戸光圀は、なぜ、三百年の時空を超えてなお、名君の名をほしいままにしているのか…。
一方、綱吉が稀代の暗君といわれるようになったのはなぜか…。
同じ三男坊に生まれながら、後世まったく反対の評価を得ている二人の殿様の実像に迫る…。

目次■拝啓 黄門さま 光圀ノ巻 第壱章 大義チガヒ申ス―兄を超えた苦しみ 西山の月/先君賞揚のキャンペーン/複雑な御家事情/綱條の願い/栴檀は双葉より/父の位牌の前で/アリバイ証明/つくられたドラマ/墓碑銘で墓穴/爺やのお小言/プレッシャー|第弐章 あひ憚る儀御座候て―密室の秘事 八十六年めの新真実/真相/状況証拠も積もれば/執念の割り注/たった一羽のコウノトリ/綱吉の跡継ぎ問題|第参章 万歳を唱へて、とよめく―演技する君主 名君の証明/鶴の恩返し/「大法」に背いて/藤井紋大夫刺殺事件/民くさの近くで/郡奉行との確執/伝説をうながした三つの要因/雲間の月||綱吉ノ巻 第壱章 有栖川殿を御代つぎとせん―幻の宮将軍 深夜の大逆転/マイナスからの出発/堀田正俊刺殺事件/怯える綱吉|第弐章 人々仁心も出来候様に―新政に賭けた夢 子供欲しさか/武装解除か/仁心の涵養/殺伐の風習/優等生と凡才/熱血教授/御前裁判/大きな政府へ|第参章 鴨ノ手紙差出ス―迷走する生類憐れみの令 消えた犬/巨大犬小屋作戦/矢ガモ騒動/鳥の島流し/初志はるか/吹き矢燕/ボウフラも?/処罰例六十九件/死罪十三件/尾鰭をもいで|第肆章 天くらくして大地鳴りわたり―あいつぐ天災 関東大消亡/天気を請け取る/大震災/犬扶持免除/沸き立つ虚説/跡継ぎ決定/家千代誕生/大噴火/不退転|第伍章 前代の事をよく言はざる―新井白石の罪 生類憐れみの令廃止?/碩学の誤算/一犬虚に吠ゆれば/あわれみ申すべく候/大逆転|むすび もののふ二人|拝啓 犬公方さま|史料リスト/年表

装幀:坂田政則
時代:寛永十年(1633)
(文春新書・710円・98/10/20第1刷・254P)
購入日:98/10/22
読破日:98/10/31

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