さぶ
山本周五郎
(やまもとしゅうごろう)
[青春]
★★★★☆☆
♪『どら平太』映画化記念で、新潮文庫で「映画と山本周五郎フェア」を実施していた。本作品は、野村孝監督、小林旭主演で映画化されている。この映画は観たことがないのでチャンスがあれば、観たいなあ。
帰省先で読んだこともあり、小さい頃、家がビンボーだったときが懐かしく思い出された。十七歳の少年たちの凶悪犯罪が新聞やテレビを騒がせている昨今、この本で久々に純粋で古き善き若者たちに出会った。家族や友人たちとの心の距離がどんどん離れていく現代社会、豊かになり、便利になり、個が尊重されていく過程でとても貴重なものを喪ってしまったような気がする。
名作と聞いていたが、確かにジーンとさせられ、柄にもないことをいろいろ考えさせられた。やっぱり、山本周五郎作品はいいなあ。
物語●小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋を西から東へ、さぶが泣きながら渡っていた。その後を追い、いたわり慰める栄二。二人は、江戸・小舟町の表具・経師の「芳古堂」に住みこみで働く同い年の職人だった。男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶ、ともに不幸な境遇に育ち、辛さを噛みしめ、心を分かち合って生きる純粋な男たち。やがて、無実の罪という試練が二人の身にふりかかる…。
目次■なし