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蒼龍

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蒼龍

蒼龍

(そうりゅう)

山本一力

(やまもといちりき)
[短編]
★★★★☆☆

オール讀物新人賞を受賞した表題作を収録した短編集。山本さんの原点に触れられる作品集。

仕事や武家の対面、藩の危機、借金など、困難に立ち向かい、力強く生きる人たちを描いた珠玉の短編集。読み終えた後の気分が爽やかで、人としてちゃんと生きなきゃという思いにさせらる。

「のぼりうなぎ」畑違いの呉服屋に転職(出向のような形で)することになった指物職人の奮闘を描く、感動作。

「節分かれ」灘の下り酒問屋の主人である父と後継者である息子の、商売をめぐる価値観の対立と、家族愛がテーマ。経営とは何かを考えさせられた。

「菜の花かんざし」牧歌的な始まりの後に、ある一家を襲う悲劇。武家と町家の価値観の対立と家族愛を描く。

「長い串」土佐藩の参勤交代を描いた短編。東海道島田宿の川留めと川越の様子が描かれていて興味深い。

「蒼龍」作者自身をモデルにし、新人賞の公募をテーマにした作品。

物語●「のぼりうなぎ」指物職人の弥助は、出入りの材木問屋杢柾の主人柾之助の仲介で、日本橋の呉服大店近江屋に手代として働くことになった。弥助の仕事振りを眼にした、近江屋の主人九右衛門が奉公人たちの手本になってほしいと懇願したのだった…。「節分かれ」灘の下り酒問屋の大手稲取屋は、灘の酒の在庫薄になり、売ろうにも売る酒が足りず、得意先に頭を下げて詫びる日々が続いていた。ここ四年続きの凶作により、入荷量が半分以下に減ったのだ…。「菜の花かんざし」柚木乃は、十歳の真之介と六歳のかえでと一緒に、菜の花畑で遊んでいた。そのころ、勝山藩の国元で剣術指南を務める夫・堀晋作に江戸から凶報がもたらされた…。「長い串」土佐藩江戸留守居役森勘左衛門は、帰国する大名行列の責任者に、藩随一の背丈と顔の長さを誇る三十九歳の吉岡徹之介を抜擢した。沈着さとタフさを買ったのだった…。「蒼龍」大工の弦太郎はサイコロ博打の負けで五両、女房のおしのは回船問屋で手代をやっていた実の兄が店の金を持ち逃げしたために五十両と、夫婦で多額の借金を抱えた…。

目次■のぼりうなぎ|節分かれ|菜の花かんざし|長い串|蒼龍|あとがきにかえて|解説 縄田一男

装画:木内達朗
装丁:斎藤深雪
解説:縄田一男
時代:「節分かれ」天明八年六月。「長い串」文化二年。
場所:「のぼりうなぎ」深川黒江町、木場、日本橋。「節分かれ」佐賀町河岸、深川常盤町。「菜の花かんざし」房州平群勝山、深川大和町。「長い串」高輪大木戸、富岡八幡宮、島田。「蒼龍」深川冬木町、富岡八幡宮ほか
(文春文庫・552円・05/04/10第1刷・361P)
購入日:05/04/19
読破日:05/04/29

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