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左近 浪華の事件帳 遠き祈り

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左近 浪華の事件帳 遠き祈り
左近 浪華の事件帳 遠き祈り
(さこんなにわのじけんちょう とおきいのり)
築山桂
(つきやまけい)
[伝奇]
★★★★

文庫書き下ろし。

2009年にNHKで放送された土曜時代劇「緒方洪庵事件帳 浪花の華」の原作になった『緒方洪庵 浪華の事件帳』シリーズの二年前が物語の舞台。

四天王寺には、〈在天楽所〉と呼ばれる芸能の一族が属していた。在天には、大坂の町の守護者たることという、もう一つの密命を持って活動する闇の集団〈在天別流〉があった。

四天王寺は、推古天皇元年(593)に、聖徳太子の発願により創建された古刹。ちょうど、難波宮(かつて大阪に宮殿が置かれていた時代があった)である。大阪歴史博物館(その展示内容もなかなか見ごたえがある)の上層階から難波宮の史跡がよく見えたことを思い出した。

築山さんの時代小説は、江戸時代の大坂の町の雰囲気がよく伝わってきて興味深い。江戸の町に飽きたら、大坂の町を訪れてみるのもいいかも。

本書では、同じ著者の『緒方洪庵 浪華の事件帳』や『浪華の翔風』に脇役として登場する、東儀左近が主人公。左近が〈在天別流〉の一員になる前のことが描かれたり、別流になってから日が浅く、まだ成長途上の左近が初々しく描かれたりしている。

大塩平八郎を心酔する同心が登場したり、京都所司代が若き日のあの人だったりで、伝奇小説っぽさがいっぱい。続編の『闇の射手』も読んでおきたい。

主な登場人物
東儀左近:男装の娘。普段は佐枝という名で高麗屋の店番をする
東儀上総:在天別流の長で、弓月と呼ばれる。左近の異母兄
林若狭:在天楽所の楽人で、饅頭屋の麗屋の店番
伏見屋仁左衛門:唐物商人
平山助三郎:東町奉行所同心
居酒屋赤穂屋の主
右馬介:在天別流の男
大塩平八郎:東町奉行所与力
さの:天満川崎村の偽占い師
小虎:人形芝居の一座の少年
秋乃:料理屋兼旅籠〈はね駒〉の女中
市五郎:はね駒の番頭
料亭美津屋の女将
藤田顕蔵:町医者
橋本曇斎:車町で蘭学塾絲漢堂を主宰する蘭学者
中天游:江戸堀の蘭方医
お艶:女隠密
三好但馬守長時:大坂目付
宇佐見修理:所司代の御用人

物語●男装の美剣士・東儀左近は、〈在天別流〉が請け負った、唐物商人の夜逃げの護衛の仕事を無事やり遂げた。その帰りに、ごろつきに追われる若い娘秋乃を助ける。しかし、秋乃は東町奉行所同心平山のために、不審がある料理屋兼旅籠〈はね駒〉に潜り込み、宿帳を盗みだしていた…。

目次■序章 高麗屋/第一章 逃亡者/第二章 娘ふたり/第三章 祈りの果て

カバーイラストレーション:村田涼平
カバーデザイン:沼田美奈子
時代:文政十年(1827)、初夏
場所:四天王寺、九条村新田、野堂町、北平野町、難波新地新川端、千日寺、南平野町神子町、難波村、ほか
(双葉社・双葉文庫・600円・2011/05/15第1刷・295P)
入手日:2012/05/18
読破日:2012/06/06

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