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女房を娶らば 花川戸町自身番日記2

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女房を娶らば 花川戸町自身番日記2
女房を娶らば 花川戸町自身番日記2

(にょうぼうをめとらば はなかわとまちじしんばんにっき2)

辻堂魁

(つじどうかい)
[捕物]
★★★★☆

『神の子』に続く、「花川戸町自身番日記」シリーズの2作目。このシリーズは、花川戸町と山之宿町の最合の自身番の書役をつとめる可一が町内で起こった事件を綴る形で進んでいく。

可一は、町内の勝蔵院脇で三代前から紅屋を営む入倉屋の次男坊で、十八のときに「物書きになる」と宣言して、家業を手伝おうとせず、部屋に閉じこもって本読みと物書き修行に明け暮れるすねかじりの日々を送っていたが、三年前の二十五のときから、町内の自身番の書役に雇われる。去年、花川竜馬の筆名で東仲町の地本問屋・千年堂より《残菊有情乱月之契》という読本を板行した。今は第三作目に取りかかっている。

 文化の世になって江戸のあちこちに定席のできた寄席のひいきというので数年前、意気投合した。特に、浄瑠璃の近松物の評判で盛り上がりつつ、先生と酒を呑むのがすこぶる愉快な楽しみになった。
(『女房を娶らば』P.43より)

物語の主人公は、話ごとに変わる。

今回の主人公は、南町奉行所の奥向きで端女奉公をするお志奈。一つ年下で半端なやくざ者の三太郎と一年半前に所帯を持った二十歳の若女房。

お志奈が仕事から帰ると、三太郎が旅支度で一緒に旅に出ようと言う。そうこう言っているところに、悪相の用心棒たちが二人が暮らす裏店にやって来る。

「あんたたち、三ちゃんをどうする気」
 と、自分のとも思えないくらい張りのある声で必死に言った。
「おまえ、三太郎の女房か」
 かすれた声がお志奈に言った。
 男らの顔がみなとても険しく、不気味だった。
「己が仕でかしたことの落とし前をつける。それだけだ。そうだな三太郎」
 かすれた声が三太郎へ続けた。
(『女房を娶らば』P.60より)

お志奈は、用心棒たちに連れ去られた三太郎を取り戻すために、奇想天外な行動を取る…。

「三太郎と夫婦になるまでは、お志奈は人情小路では一番の器量よしで評判でした」
「人情小路?」
「自身番のある辻から浅草川堤までの、花川戸と山之宿の境の通りをここら辺では人情小路と呼んでいるんです」
(『女房を娶らば』P.112より)

ヒロインのお志奈の果敢な行動が見どころだが、お志奈が働く南町奉行所で係わり合いをもつ、奉行の奥方・瑞江が個性的で物語を光らせている。物語は、辻堂さんらしい、スケールの大きな捕物小説に仕上がっている。

主な登場人物
可一:花川戸の自身番の書役で、読本作者見習い
高杉哲太郎:手習い師匠
吉竹:一膳飯屋「みかみ」の主人で、可一の幼友達
お富:吉竹の女房
甚兵衛:薬種問屋・界屋の主
宇兵衛:自身番の当番
勇吉:大和寿し
お志奈:可一の幼馴染みで、南町奉行所に端女奉公に出ている
三太郎:お志奈の夫
羽曳甚九郎:南町奉行所定町廻り方同心
梅吉:羽曳の手先
丈太:梅吉の手下
小泉重和:南町奉行所市中取締諸色調掛同心
民吉:隅田村の百姓
本庄虎右衛門:寄合旗本・安佐野家の用人
村井山十郎:安佐野家の剣術指南役
吉田屋伊吉:馬喰町の読売屋・地本問屋吉田屋の主人
南町奉行
瑞江:南町奉行の奥方
沢野:奥女中
鈴木善兵衛:南町奉行所内与力
高田伴右衛門:南町奉行所年番方筆頭与力
お加世:南町ご番所奥向き台所下女頭
お八重:女髪結
お千瀬:裏櫓の女郎屋田島屋の遊女
金八:天王町の地本問屋・読売屋の栗田屋
お浜:堂前の女郎屋・酒田の遣り手
小田切常敏:北国の某藩で国士無双の槍の名手
須磨:常敏の女房
芦名久守:北国の某藩のお小姓方組頭
小田切仙十郎:久守の朋輩で常敏の兄

物語●南町奉行所の奥向きで端女奉公をするお志奈が浅草花川戸町の裏店に帰ると、定職を持たない一つ年下の三太郎がなぜか旅支度中で、一緒に旅に出ようと言う。前の晩、近くの橋場町の渡しで追剥ぎ騒動があったばかり……。
と、腰高障子が激しく音を立て、悪相の用心棒たちが「己が仕でかしたことの落とし前をつける」と三太郎を引き立てていった。
残された若い女房のお志奈は、ひどく忌まわしく、恐ろしい出来事がふりかかりそうな気がした。三ちゃんが殺される……。

目次■序 言問い/第一話 ろくでなし/第二話 無謀/第三話 国士無双/第四話 のるかそるか/結 さねかずら

カバーイラスト:浅野隆広
カバーデザイン:ヤマシタツトム(ヤマシタデザインルーム)
時代:文化十一年?(二十歳のお志奈が十二の年が文化三年)
場所:隅田村水神社、寺島村、花川戸町、山之宿町、人情小路、南八丁堀、山本町、浜十三町、鳥越橋、馬喰町三丁目、龍光寺門前町(堂前)、坂本町、甚内橋、正定寺門前町、江戸城老中御用部屋、浅草寺境内、新鳥越町、ほか
(二見書房・二見時代小説文庫・648円・2012/10/25第1刷・325P)
入手日:2013/02/15
読破日:2013/06/10

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