闇の旋風 問題小説傑作選5 捕物帖篇
(やみのかぜ・もんだいしょうせつけっさくせん5・とりものちょうへん)
徳間文庫編集部編
(とくまぶんこへんしゅうぶへん)
[捕物]
★★★★
♪アンソロジーは苦手だったが、本書のセレクションが気に入っていたので読み始めた。質の高い作品が並んでいて楽しく読めた。
「南蛮うどん」は、「夢裡庵先生捕物帳」の第一集『びいどろの筆』(徳間文庫)収録。「望郷三番叟」は、『新門辰五郎事件帖』(徳間文庫)収録。「降って来た赤ン坊」は、「疫病神捕物帳」の第二集『降って来た赤ン坊』(徳間文庫)収録。「女狐の罠」は、「足引き寺閻魔帳」の第二集『女狐の罠』(徳間書店)に収録。「妖しい月」は、「十時半睡事件帖」の第三集『刀』(講談社文庫)。「餌差しの辰」は、『江戸妖花帖』(徳間文庫)収録。「一番は諫鼓鶏」は、「なめくじ長屋捕物さわぎ」第六集の『かげろう砂絵』(光文社文庫)に収録。「三度殺された女」は、『江戸御用帳―岡っ引源蔵捕物譚』(双葉文庫)に収録。「八丁堀の狐」は単行本未収録の作品。「初不動地獄の証文」は、『始末屋卯三郎暗闇草紙』(徳間文庫)収録。収録されている本が読みたくなった。
物語●「南蛮うどん」家を出た海苔問屋の若旦那は火を食べる芸を見せた後に体の具合がおかしくなった…。「望郷三番叟」慶喜に付き従って静岡までやってきた新門辰五郎は、静岡で芝居興行を行ったが…。「降って来た赤ン坊」疫病神と異名で呼ばれる妻恋坂の呑太は、岡っ引で江戸いちばんの嫌われ者だった…。「女狐の罠」西町奉行所同心の蓮根左仲は盗賊の処刑に立合わされた…。「妖しい月」大西平三郎は、婚礼の夜、丸い月に誘われるように失踪した…。「餌差しの辰」留吉は三味線堀で、餌差しの辰と出会った…。「一番は諫鼓鶏」神田明神の大祭の宵宮、祭ゆかたに豆絞りの手ぬぐいで頬被りし、ひょっとこの面を被った恰好で、男が死んでいた…。「三度殺された女」神田明神の宵宮、紙問屋の後家が殺された。頭を割られて、首を絞められ、胸を刺されていた…。「八丁堀の狐」加田三七は米屋の奉公人が神隠しにあった話を聞いた…。「初不動地獄の証文」初不動の縁日で賑わう薬研堀の植木市で、札差の番頭が五十両を掏られた…。
目次■南蛮うどん――泡坂妻夫|望郷三番叟――海渡英祐|降って来た赤ン坊――笹沢左保|女狐の罠――澤田ふじ子|妖しい月――白石一郎|餌差しの辰――多岐川恭|一番は諫鼓鶏――都筑道夫|三度殺された女――南條範夫|八丁堀の狐――村上元三|初不動地獄の証文――結城昌治|解説 縄田一男