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洛中の露 金森宗和覚え書

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洛中の露 金森宗和覚え書
洛中の露 金森宗和覚え書
(らくちゅうのつゆ・かなもりそうわおぼえがき)
東郷隆
(とうごうりゅう)
[戦国]
★★★★

大河ドラマ「秀吉」でも登場したが、信長の家来に黒人がいるのがずっと不思議だった。その経緯がこの本を読んでわかった。ちなみに彼は、弥助という名前をもっていた。

そのほか、家康の伊賀越えと穴山梅雪の死の謎。古田織部正の反乱。大坂の陣をめぐる東西の駆け引き。など、興味深い事件を背後に扱っている。ちょうど茶室で交わされる武功や合戦譚のように。

また、幻術を扱った作品もあり、東郷さんの面目躍如といった感じで、ちょっと贅沢な連作小説となっている。

主人公は、金森宗和(かなもりそうわ)で当時三十二歳。飛騨高山城主金森可重の嫡男で、慶長十三年に従五位下飛騨守に叙せられるが、大坂冬の陣の最中に、突如廃嫡される。京の町衆灰屋甚助の計らいで、烏丸今出川御所八幡上半町に数寄屋を定めていた。家人はかつて乱波であった源五衛門ひとりだった。

茶人武将というと『花鳥の乱』(岳宏一郎著・マガジンハウス)で登場した、利休の七哲が有名だ。宗和は、これからというところで政治の表舞台を退いたために描かれなかったのであろう。

物語●「弥助」金森宗和は、仁和寺搭頭跡の竹薮に住む老人・おむく斎が信長所縁のものらしいとわかり、茶会に招いた…。「茶筅」都に風流踊りが流行る中、宗和は、茶筅売りを茶をふるまった…。「讃岐簾」宗和の家人源五衛門は、禁裏出入りの簾職人・讃岐の頼包のもとに、簾買いに行く途中で幻術にたぶらかされてしまう…。「鉄線蓮」宗和の母が拾った行き倒れの男が持っていたのは…。「共筒」宗和の茶仲間で関ケ原牢人・越智喜左衛門は、寺男を勤める友人を訪ね、洛南の寺で大工の中井家の所縁のものが難民になっているのを見かけた…。「白昼夢」宗和のもとに、金森一族の老僧の訪問を受けた。金森家の危機を救えといわれる…。「灰天目」宗和は交遊のある後藤又兵衛基次の持つ、灰被天目茶碗を借りるために…。

目次■弥助|茶筅|讃岐簾|鉄線蓮|共筒|白昼夢|灰天目|あとがき

>装画:巻白
装幀:新潮社装幀室
時代:慶長二十年(元和元年)。
舞台:烏丸今出川御所八幡上半町。
(新潮社・1500円・98/1/20第1刷・305P)
購入日:98/1/20
読破日:98/3/14

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