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八丁堀吟味帳 鬼彦組

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八丁堀吟味帳 鬼彦組
八丁堀吟味帳 鬼彦組
(はっちょうぼりぎんみちょう おにひこぐみ)
鳥羽亮
(とばりょう)
[捕物]
★★★★

文庫書き下ろし。

中西派一刀流の遣い手で、北町奉行所吟味役与力を務める彦坂新十郎が率いる、奉行所内の探索集団『彦坂組』(別名『鬼彦組』)が活躍する捕物小説。

 本来、事件の探索にあたるのは、三廻りと呼ばれる定廻り、臨時廻り、隠密廻りの同心である。吟味方与力が、直接探索や捕縛に乗り出すことはない。だが、新十郎はこれまで何度か、同心たちが手を焼くような事件や己が吟味にあたった事件に疑念をいだいたときなど、あらためて探索に乗り出すことがあった。

(『八丁堀吟味帳 鬼彦組』P.51より)

物語の中でも記載されているとおり、職務上の問題から吟味方与力が事件の探索にあたることはほとんどなかったために、作者は三廻りの同心だけでは手に負えないような大事件や奉行所全体にかかわるような事件が起きると、何人か同心が自発的に新十郎の許に集り、「鬼彦組」として、事件に当たると説明している。

捕物小説で与力が主人公になることが少ないのも上記のような理由からだが、「鬼彦組」が組織された経緯から、取り扱う事件が大きくて、その分物語としてスケール感も大きくて面白くなっている。

何人かの同心とその配下の岡っ引きで、事件の探索に乗り出すことから、捜査に重層感があり、現代の警察を舞台にしたミステリー小説のようなリアル感がある。

また、新十郎や同心倉田など剣の遣い手を主役に据えたことで、チャンバラシーンが大いに楽しめるのも鳥羽作品ならではの魅力のひとつ。

主な登場人物
彦坂新十郎:北町奉行所吟味方与力。二十八歳、独り身で、中西派一刀流の遣い手
彦坂富右衛門:新十郎の父で隠居
彦坂ふね:新十郎の母
青山峰助:彦坂家の若党
倉田佐之助:北町奉行所定廻り同心。中西派一刀流の遣い手で新十郎の弟弟子。「鬼彦組」
高岡弥太郎:北町奉行所定廻り同心。二十代半ばで、定廻り同心になってから二年目の若手。「鬼彦組」
根津彦兵衛:北町奉行所定廻り同心。「屍視の彦兵衛」と呼ばれる検屍の達者。「鬼彦組」
利根崎新八:北町奉行所定廻り同心。「鬼彦組」
狭山源次郎:北町奉行所臨時廻り同心。「鬼彦組」
田上与四郎:北町奉行所臨時廻り同心。「鬼彦組」
駒造:倉田配下の岡っ引き
利助:倉田に仕える小者
浅井文左衛門:北町奉行所年番方与力
涌田稲之助:北町奉行の内与力
榊原主計頭忠之:北町奉行
横川史之助:北町奉行所定廻り同心
横川成一郎:横川の倅
横川いそ:成一郎の姉
伊助:横川配下の岡っ引き
浜吉:伊助の下っ引き
およし:相対死をしたとされる娘
平右衛門:米問屋富沢屋の主人で、およしの父
千次郎:およしの相対死の相手とされた、遊び人
赤堀与之助:北町奉行所定廻り同心
権六:赤堀配下の岡っ引き
孫七:船頭
猪吉:遊び人
留吉:船頭
おれん:小料理屋「蔦屋」の女将
勘兵衛:米問屋越前屋の主人
重蔵:越前屋の番頭
五助:越前屋に勤める船頭
おとく:深川黒江町の瀬戸物屋の娘
西崎稲三郎:黒江町に住む徒牢人
寺田宗兵衛:牢人
島次:猪吉の遊び仲間
磯五郎:猪吉の遊び仲間
吉助:利根崎配下の岡っ引き
盛助:船頭

物語●北町奉行所定廻り同心の横川史之助とその手先の岡っ引き伊助が、鉄砲洲本湊町で斬殺体発見された。二人は、三月前に大川で揚がった不審な相対死(心中)に疑念を持ち、ひそかに探索をしていた。吟味方与力の彦坂新十郎は、奉行所の威信をかけて、中西派一刀流の遣い手の倉田佐之助や検屍の達者・根津彦兵衛など、配下の同心たちとともに捜査に乗り出した…。

目次■第一章 同心の死/第二章 相対死/第三章 待ち伏せ/第四章 巨悪/第五章 偽装/第六章 極楽屋敷

イラスト:蓬田やすひろ
デザイン:関口信介
時代:天保二年(1831)
場所:鉄砲洲本湊町、八丁堀組屋敷、日本橋小網町、南飯田町、十軒町、諏訪町、佐賀町、駒形町、日本橋伊勢町、南茅場町、鉄砲洲稲荷、寺島村、ほか
(文藝春秋・文春文庫・600円・2012/03/10第1刷・299P)
入手日:2012/06/05
読破日:2012/06/10

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