必殺剣「二胴」
(ひっさつけん・ふたつどう)
鳥羽亮
(とばりょう)
[剣豪]
★★★☆☆☆
♪主人公の小野寺佐内の剣客ぶりが一皮剥けた感じ。作者の創り出した今までのヒーローたちより凄味を感じる。富田流居合術の小さな道場を維持するために、何のためらいも持たずに人斬りをするドライさ、腹部を両断する必殺剣「二胴」を打ち破るために、女を斬ることも厭わない鬼気迫る剣豪ぶりに、新しさを感じた。
正体がわからない「二胴」の遣い手の謎や、蓑田藩の激烈な藩内抗争、そして物語にアクセントをつける二人の女性(満枝とおしま)など、最後まで一気に読ませるツボを抑えた時代活劇。
物語●富田流居合術の遣い手、小野寺佐内は、蓑田藩士・萩原左馬之輔を小名木川沿いの人目のない場所で、殺害した。口入れ屋をしている益子屋新蔵に、三月の期限で、左馬之輔の殺しの依頼を受けていたのだった。その数日後、左馬之輔殺しの依頼人で、蓑田藩江戸留守居役の用人が、一太刀で腹を両断されて死体で見つかった。
佐内の父もかつて、富田流居合術指南の道場を維持するために、刺客の仕事をしていた。そして五年前、蓑田藩のがらみの仕事中に、用人と同じように、一太刀で腹を斬られて殺されたのだった…。
目次■第一章 江戸の刺客/第二章 鬼気迫る/第三章 蔓と狗/第四章 鬼剣一拍子/第五章 狼走の太刀/第六章 霞返/解説 菊池仁