姫路城 凍って寒からず 小説・河合道臣
(ひめじじょう・こおってさむからず・しょうせつ・かわいどうしん)
寺林峻
(てらばやししゅん)
[人物]
★★★★
♪『小説 上杉鷹山』(童門冬二著)と同様に、経済小説としてビジネスマンに多く読まれているようで、発売から3ヵ月ぐらいで早くも6刷だった。内容的にも『小説 上杉鷹山』と共通する部分が多い。
姫路城って城郭が整いすぎていて、物語になりにくいと思っていた。また、酒井家についても、家光の頃の下馬将軍のイメージが強くて、この本を読むまでは、姫路に転封されていたとは知らなかった。まして、年間収入の七倍もの巨額の負債を抱えていて、破綻の瀬戸際にあったとは…。どうも、姫路藩の場合、条件が恵まれている中での財政再建のような感じがして、米沢藩ほど共感が沸かない。
藩主の親戚である絵師の酒井抱一が作中でいいアクセントになっている。
「凍って寒からず」とは、南宋の朱子の言葉で、身辺は凍りつくように寒くても気持ちを熱く保っていれば心中まで凍てついてしまうことはない、という意味で、落ち込んでしまいそうになるときに、道臣が口ずさむ言葉である。
◆主な登場人物
河合道臣:播州姫路・酒井家家老
高須隼人広長:酒井家上座家老
国府寺次郎左衛門:町方大年寄、姫路の本陣主人
泰子(たいこ):林田藩家老の娘、道臣の妻
酒井忠道(ただひろ):酒井家の姫路三代目
小太郎:道臣の養子
錦泉(きんせん):道臣の三女
松下源太左衛門高知:小太郎の実父
半藤治衛門正之:勝手向き担当家老
村田継儒:道臣の旧友、儒者
酒井抱一:酒井家姫路二代目宗雅忠以の弟で、琳派の絵師
物語●時は江戸後期。元禄バブルの後遺症で、播州姫路藩は七十万両を超える借財を抱え、財政破綻の危機に瀕していた。再建の万策が尽きたところで、文人派の家老・河合道臣が藩の勝手向き(財政担当)を命じられる…。
その意外な人選を危ぶむ周囲の声をよそに、道臣は次々と政策を断行していく…。
目次■無用の用/崖っぷち/白い蝶/玉川さらし/紙の獣/風雅の人/花林/あとがき
装幀:川畑博昭
時代:文化五年(1808)
舞台:播州姫路、江戸木挽町
(東洋経済新報社・1,600円・1998/01/30第1刷・1998/04/1第6刷・302P)
購入日:98/03/29
読破日:98/05/05