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江戸の想像力

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江戸の想像力
江戸の想像力
(えどのそうぞうりょく)
田中優子
(たなかゆうこ)
[江戸入門]

1986年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞作。

かつての江戸ブームの起こりとなった、名著を読む機会をようやく得た。成功の半分は、タイトルのネーミングの奇抜さにあるように思われたが、読みはじめてみると、評論には珍しく、その論理の展開の自由奔放さとグローバリズムが知的好奇心をくすぐり、心地いいのである。

平賀源内と上田秋成という同時代人ながら、まったく異質の個性を持つ二人の文化人を軸に据えたのがよかった。

童門冬二さんの『冬の火花 上田秋成とその妻』(講談社文庫)を読んだときには、うすぼんやりとした感じで、ピントがずれた感じだった、上田秋成像がようやくはっきりとしてきた。たぶんに秋成のことを知らなすぎたせいだろう。

読みどころ●近世的なるものとは何だったのか。平賀源内と上田秋成という同時代人ながらまったく正反対の個性を軸にしながら、博物学・浮世絵・俳諧・世界図・読本といったさまざまなジャンルの地殻変動を織り込んで、18世紀江戸の外国文化受容のありようとダイナミックな近世の運動を描いた評論。

目次■はじめに――近代的なるものへ|第一章 金唐革は世界をめぐる――近世を流通するもの(一 世紀末天明様態/二 天明元年のかばやき/三 金唐革は世界をめぐる/四 紙から見た美術史/五 本草学は借金錬金術/六 源内伝説と密貿易)|第二章 「連」がつくる江戸十八世紀――行動本草学から落語まで(一 動く本草学へ/二 俳諧のネットワーク/三 作ったものの連・作る場の連/四 狂歌連と落語/五 連の生み出したもの――解体新書・東錦絵・銅版画)|第三章 説話の変容――中国と日本の小説(一 宋の説話人/二 俗文学の流入/三 呼び起こされる神々/四 浮世草子『白娘子永鎮雷峰塔』の世界/五 生命的なるものをめぐって)|第四章 世界の国尽し――近世の世界像(一 はなしと江戸文学/二 近世世界地図遍歴/三 マテオ神父の冒険/四 白石の懐疑/五 複数の世界像/六 羅列の形式――尽し・競べ・道行・双六・絵巻)|第五章 愚者たちの宇宙――『春雨物語』の世界(一 列挙が可能にするもの/二 意味づけからの奔走/三 境界を生きる者たち――愚者・悪漢・人間もどき/四 源内と秋成――江戸十八世紀の両極)|あとがき/『江戸の想像力』文庫版によせて/解説 創造としての想像力 松田修

カバー装画:鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」より
カバー装幀:菊地信義
解説:松田修
(ちくま学芸文庫・880円・92/06/26第1刷・97/01/30第3刷・316P)
購入日:99/04/29
読破日:99/05/08

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