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纐纈城綺譚

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纐纈城綺譚

纐纈城綺譚

(こうけつじょうきたん)

田中芳樹

(たなかよしき)
[中国]
★★★☆☆☆

纐纈城というと、国枝史郎の『神州纐纈城』(講談社大衆文学館)がまず、頭に浮かぶ。神州というだけに日本の戦国時代の甲州・武田家を舞台としているが、そのもとは、中国の話だ。

と、ここまでは知っていたのだが、実は日本人が深く関わっていと知ってちょっと驚いた。留学僧として唐に渡っていた円仁(慈覚大師)がその人で、魔窟・纐纈城から脱出したという。しかも、そのエピソードは『宇治拾遺物語』巻第十三に「慈覚大師 纐纈城ニ入ル事」として書かれているらしい。うーむ、もっと古文をちゃんとやっておけばよかった。

田中さんのこの作品は、いわば、その『宇治拾遺物語』の後日談である。あとがきで執筆の動機を高校時代に古文の勉強として読んだ纐纈城の話が頭をとらえ、期待して読んだ『神州纐纈城』では、中国の話のその後が語られていなかったために、自分で書くことにしたとしている。

伝奇小説であり、武侠小説の形態をとっているが、その一方で歴史背景や史実を重視し、登場人物たちも、皇帝や宰相まで実在の人物が作中で活躍している。とくに宣宗皇帝の友人であり安南都護として有名な王式が魅力的に描かれている。

物語●揚州で、日本からの留学僧・円仁に恐ろしい纐纈城の話を聞いていた武侠の辛とう(言べんに当の旧字)は、友人の李延枢(りえんすう)といっしょに長安にやって来た。二人は、宣陽坊の綵纈鋪(ごふくや)で、纐纈布(人の生血を絞り取って染めた布)を見かけ、纐纈城への手がかりをつかんだ。しかし、思わぬ邪魔が…。

目次■第一章 秋風ノ巻/第二章 幻戯ノ巻/第三章 高楼ノ巻/第四章 残月ノ巻/第五章 白霧ノ巻/第六章 断影ノ巻/余章/後記/解説(芦辺拓)

カバーイラスト:藤田和日郎
カバーデザイン:小倉敏夫
解説:芦辺拓
時代:大中元年(847年)
場所:長安
(朝日ソノラマ文庫ネクスト・476円・98/11/20第1刷・239P)
購入日:98/11/29
読破日:98/12/17

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