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べらんめえ侍

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べらんめえ侍

(べらんめえさむらい)

多岐川恭

(たきがわきょう)
[短編]
★★★☆☆☆

『江戸智能犯』(1989年、大陸文庫刊)を改題。剣客の中で異彩を放つ平山行蔵を主人公とした表題作ほか6編を収録した短篇集。

『玄白歌麿捕物帳』(笹沢左保著・光文社文庫)を読んで以来、ずっと気になる人物に平山行蔵がいる。忠孝真貫流の剣客であり、武芸百般に通じた軍学者であり、超人的な修練の実践者であり、忠孝の人である、江戸屈指の奇人を描いた小説が読みたかったので、興味深く読めた。

「足軽義士」は、『四十七番目の浪士』を思い出させる、寺坂吉右衛門にスポットを与えた忠臣蔵もの。

しかしながら、多岐川さんの本領発揮といえるのは、アウトローたちが粋に魅力的に描かれている「江戸智能犯」「焼芋屋の娘」「黒頭巾」「新景牡丹灯籠」である。

物語●「江戸智能犯」上総の寺の破戒僧・芳念は、江戸・品川の遊女屋でお梅と出会い、請け出す決心をした…。「新景牡丹灯籠」円朝の怪談噺で有名な牡丹灯籠。その登場人物、源助が語る本当の話とは…。「黒頭巾」夫を亡くしたおよねは、娘おちかと女中の三人で深川のしもた屋で暮らしていた。幕末の巷は物騒で黒頭巾の押込み強盗が流行っていた…。「焼芋屋の娘」古鉄屋の前で、大男の伝三郎が行き倒れになっていたところを古鉄屋の女房に助けられた。無芸大食で取り得がなく、みんなからいじめられていた伝三郎に近所の芋屋の娘お時がいつもやさしく接していた…。「逃げ込んだ流れ者」渡世人・五十松は、女出入りでやくざの親分に追われて、茶店を営む百姓夫婦のところで匿ってもらうことになった…。「べらんめえ侍」江戸後期を、兵法家、剣客としてしかも無骨な軽輩の伊賀者として生きた平山行蔵の奇人ぶりをお紺という粋筋の女を通して描く短篇。「足軽義士」吉良邸討入りに、陪臣の足軽として加わった寺坂吉右衛門の事件前と後を描いた短篇。

目次■江戸智能犯|新景牡丹灯籠|黒頭巾|焼芋屋の娘|逃げ込んだ流れ者|べらんめえ侍|足軽義士|解説 縄田一男

カバーイラスト:蓬田やすひろ
解説:縄田一男
時代:「黒頭巾」慶応三年。「足軽義士」元禄十四年
場所:「江戸智能犯」品川、芝口。「新景牡丹灯籠」牛込軽子坂、亀戸。「黒頭巾」深川万年町、北松代町二丁目。「焼芋屋の娘」深川八幡。「逃げ込んだ流れ者」鳳来寺。「べらんめえ侍」四谷伊賀町。「足軽義士」京都山科。
(光文社文庫・514円・98/06/20第1刷・99/11/20第2刷・294P)
購入日:00/04/29
読破日:01/05/13

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