宵の夢
(よいのゆめ)
竹田真砂子
(たけだまさこ)
[芸道]
★★★☆☆
♪「新・時代小説宣言」というキャッチフレーズと中村勘三郎の文字、蓬田さんの表紙に惹かれて、新しい作家、しかもハードカバーにもかかわらず購入した。
著者は、東京・神楽坂(芸者さんもいるちょっと艶っぽい町)生まれで、「十六夜に」でオール讀物新人賞を受賞し、歌舞伎の世界にも精通した人らしい。
南原さんの「江戸吉凶帳」にも勘三郎は登場しているが、あちらは200年ほど後の勘三郎である。また、市村座の座元が市村宇左衛門(羽左衛門ではなく)となっているのも目をひく。
京のかぶきと幕府の関係、若衆歌舞伎や江戸四座(絵島生島事件の前なので、山村座もある)の興行ぶりなど、江戸歌舞伎初期の様相を精妙に描いていて面白い。学生時代に日本演劇史の講義を思い出した。もっとも、ちゃんと授業に出たのは2、3回だが。
物語●二代目中村勘三郎が28歳の若さでこの世を去った。勘三郎と昵懇な仲の人気女形の瀧井山三郎がその弔問にやってこない。見物の衆から不審の声が…。勘三郎の変死の謎と歌舞伎の世界の華と、政治の世界の陰を描く。