若獅子家康
(わかじしいえやす)
高橋直樹
(たかはしなおき)
[戦国]
★★★★☆
♪『最後の総領・松平次郎三郎』(1995年2月、講談社刊)を改題。最近、気になる気鋭の時代小説家が若き日の家康を描くことに惹かれる。
家康の伊賀越えを描いた『日輪を狙う者』(中公文庫)などで、今、注目される時代小説家・高橋直樹さんの長篇デビュー作。
家康以前の松平家の当主(七代清康、八代広忠)たちの非業の死を描くことで、権力抗争の熾烈さ、総領のもつ意味を明らかにし、その後の家康像の人間形成をシンボライズした作品。高橋さんらしいドロドロさ、荒ぶり、新しさを感じさせる。化ける前の家康の描かれ方が新鮮。
ふと、徳川三代目に、嫡孫・家光を推した家康と、器量から鑑みて次男忠長を推そうとした三男秀忠の違いを思い出した。
物語●今川義元の後見のもとに、元服をした松平次郎三郎元信(のちの徳川家康)は、八年ぶりに故郷、岡崎へ戻ることになった。次郎三郎にとって、岡崎は住み慣れた駿府に比べて、貧しく田舎じみて感じられたが、岡崎衆は成長した次郎三郎を迎えて興奮していた。そこで、次郎三郎は、松平家の総領に課せられた運命と役割を教えられた…。
目次■第一部 二の丸入城/第二部 総領の首/第三部 萌芽/解説 縄田一男