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虚空伝説 餓鬼草子の章

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虚空伝説 餓鬼草子の章虚空伝説 餓鬼草子の章
(こくうでんせつ・がきぞうしのしょう)
高橋直樹
(たかはしなおき)
[伝奇]
★★★★☆☆

『虚空伝説』(1998年12月、講談社刊)を大幅に加筆したもの。祥伝社で新たに、NON時代伝奇ロマンと銘打ったシリーズを始めた。不思議と、伝奇ものには新書サイズがよく似合う。高橋直樹さんというと、『日輪を狙う者』、『天魔信長』、『大友二階崩れ』など、新感覚の戦国歴史小説の書き手というイメージを持っていただけに、本作品で新しい面を見た気がする。

物語は、『木枯し紋次郎』を彷彿させるような荒廃した上州の風景から始まる。主人公の矢月繋(やづきつなぐ)が、何ともクールでインパクトが強いキャラクターだ。もともとバイオレンスものは苦手な方だが、この作品は構成がうまく、ディテールの描写も木目細かくて、一気に読めた。

本多正信の後裔で、幕府非公認隠密団「陽炎(かげろう)」を率いる大目付・松平弾正少弼正房や、岡っ引・岡安、博徒の情婦・おきゃんなど個性的な脇役も魅力的だ。

物語●編笠を目深にかぶり、定寸の両刀を腰に帯びた、三十前後の細身の男・矢月繋(やづきつなぐ)。関八州では、「餓鬼草子」という通り名で知られ、三百両の報酬でいかなる殺しも請け負う殺し屋だった。繋は、御日記帳改兼帯の大目付で五千石の旗本・矢月備前守の嫡男だった。その父は、繋が幼いときに将軍家の秘事に関わり、何者かに家族、郎党もろとも殺された。繋は、父の死の謎を解き、敵を討つために動き始めた…。
第一話:餓鬼草子の誕生と、織物の町・桐岡(桐生がモデルか?)で繋が依頼された仕事を描く。第二話:繋は、掛け茶屋、情婦を殺した遊び人を地頭所に引き渡そうとする、老人・大野幽学と知り合う。幽学は、長沢村で「性学」をもとに理想の村づくりに取り組んでいた…。第三話:繋は、「小伝馬牢」に入牢することになった…。

目次■第一話 餓鬼草子誕生・禍福の陽炎/第二話 苦力の士・踏みにじられた果実/第三話 小伝馬牢・御臨終地獄

表紙カバー:正子公也
装幀:中原達治
本文イラスト:諏訪原寛幸
時代:安永八年(1779)
場所:板橋宿、四谷鮫ヶ橋、浜町、桐岡、長沢村、小伝馬町ほか
(祥伝社ノン・ノベル・886円・00/07/20第1刷・342P)
購入日:00/07/16
読破日:00/07/30

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