鬼九郎五結鬼灯
(おにくろうごけちほおずき)
高橋克彦
(たかはしかつひこ)
[伝奇]
★★★★☆
♪舫鬼九郎シリーズ第3部。いかにも伝奇ものらしい、不二本さんの装画がそそる。鬼九郎の出生の秘密に迫るほか、幡随院長兵衛や天竺徳兵衛、柳生十兵衛、高尾太夫ら錚々たる脇役陣の見せ場も用意されているみたいだ。
読むまでタイトルの意味がわからなかったが、各章のタイトルに盛りこまれている主要な登場人物(幡随院長兵衛、天竺徳兵衛、遊女高尾、柳生十兵衛、舫九郎)の5人にスポットを当てた巻であるという意味であるらしい。この5人の活躍を順繰りに紹介しながら、面白いハーモニーを見せている。
九郎の出生の秘密や、いかにして秘剣“緋炎の剣”を修得したかが明かされる。シリーズ最大のクライマックスを迎えた印象を受けた。果たして“鬼灯”たちの今後の活躍は見られるのだろうか。
物語●先月の会津の旅(『鬼九郎鬼草子』の巻参照)から無事に戻った幡随院長兵衛と唐犬権兵衛は、両国の喧騒のなかにあった。両国は二人のライバル夢の市郎兵衛の縄張りで、寛永寺の後ろ盾をもらっているだけに喧嘩を避けたい身だが、評判の女形・村山左近太夫を見るために芝居小屋へやってきた。そこで、早速、騒動に巻き込まれることになる…。
目次■長兵衛獄門首/女難徳兵衛/怪談高尾/重ね十兵衛/九郎非情剣/解説 笹川吉晴