長脇差大名
(ながどすだいみょう)
高木彬光
(たかぎあきみつ)
[捕物]
★★★☆☆
♪高木彬光さんというと、15年ぐらい前までは推理小説界を代表する作家の一人で、『白昼の死角』などで知られた方である。中学生の頃に読んだ、義経=ジンギスカン説を扱った『成吉思汗の秘密』が印象に残る。そのため、本作のようなオールドスタイルの時代小説を書かれていたことが意外だった。
「大名五郎蔵」と呼ばれる侠客を描いた連作形式の時代小説で、春陽文庫らしいつくりになっている。五郎蔵って聞くと、『鬼平犯科帳』の密偵・大滝の五郎蔵がまず頭に浮かぶが。こちらの五郎蔵さんもなかなかユニークだ。武州川越十八万五千石、松平大和守の長男麻若丸が、世子の座を捨て、人入れ稼業の元締めになったのである。そんな彼の周りには、剣難女難がつきまとう…。
物語●「花の千両肌」川越藩に奉公にあがっているお小夜の父で、人入れ稼業の大和屋が何者かによって辻斬りにあった…。「大名五郎蔵」ばくち帰りの侠客が大名五郎蔵と名乗る男に斬殺された…。「名月安宅丸」大名五郎蔵は、夜道で、刃物をもった男に襲われかかった御殿女中を助けた…。「異聞髑髏屋敷」ばくち帰りの五郎蔵は、夜道で武家娘に仇と斬りかかられた…。「長脇差あらし」五郎蔵は子分といっしょに湯ガ島の温泉に来ていた…。「妖説鬼女屋敷」五郎蔵は骨董商の男からばくちのかたに唐獅子の置物を預かった…。
目次■花の千両肌|大名五郎蔵|名月安宅丸|異聞髑髏屋敷|長脇差あらし|妖説鬼女屋敷