心星ひとつ みをつくし料理帖
(しんぼしひとつ)
高田郁
(たかだかおる)
[市井]
★★★★☆☆
♪「こいつぁいけねぇ」つる家の主人の口癖が思わず出てくる。『心星ひとつ』を読んだ後の感想。畳み掛けたり、張り巡らせた伏線にピッタリはまったり、高田さんのストーリーテリングの巧さを堪能する。第5作目『小夜しぐれ』での展開が気になっていたが、ここにつながるんだ。書き始める前に設計図を作ってしまうタイプというのもうなずける。
『心星ひとつ』の巻末の「みをつくし瓦版」(聞き手がりうで、版元が坂村堂というのがファンにはたまらない設定だが)で、高田さんの創作ぶりが明らかになる。内容や構成、料理を考えるのに1、2か月、執筆に2か月、遂行や取材に2か月で、どうしても5か月から半年は必要というのに、納得。
また、今回、日本橋の名店で料理番付の行事役である「一柳」の主・柳吾が新たに登場する。
今回の「澪の料理帖」で、実際に作ってみたいと思ったのは、「大根の油焼き」。料理がシンプルな割りに、物語の中での描写がなんとも旨そうだ。お弁当のおかずにも良さそうだし。思わずスーパーに粉山椒を買いに行きたくなった。
物語●つる家の女料理人の澪に、吉原の妓楼翁屋の主・伝右衛門から、手を貸すので吉原で天満一兆庵を再建しないかという話がもたらされた。その直後には、登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るので、つる家として移ってこないか、という話があった。しかも、登龍楼で奉公している、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとのこと。料理人として人生の岐路に立たされた澪は、決断を迫られることに…。
目次■青葉闇 しくじり生麩/天つ瑞風 賄い三方よし/時ならぬ花 お手軽割籠/心星ひとつ あたり苧環/巻末付録 澪の料理帖/特別付録 みをつくし瓦版
装画:卯月みゆき
装幀:西村真紀子(albireo)
時代:明示されず
場所:神保小路、元飯田町、三ツ橋、日本橋炭町、日本橋柳町、吉原江戸町一丁目、中坂田安(世継)稲荷、金沢町、白魚橋、化物稲荷、牛込御門近く、俎橋ほか
(角川春樹事務所・ハルキ文庫・590円・2011/08/18第1刷・297P)
購入日:2011/08/14
読破日:2011/08/15
■今回取り上げた本