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夏天の虹 みをつくし料理帖

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夏天の虹 みをつくし料理帖夏天の虹 みをつくし料理帖
(かてんのにじ みをつくしりょうりちょう)
高田郁
(たかだかおる)
[料理]
★★★★☆☆

江戸の料理をテーマにした人情時代小説「みをつくし料理帖」シリーズの第七弾。最近の巻では、市井の人情味もさることながら、ヒロインの澪の恋愛にスポットを当てて描かれるウエートが大きくなっている。

待望の新作の文庫の帯には、「大好評シリーズ、〈悲涙〉の第七弾!!」の文字が。不吉な(いやーな)思いに駆られながら読み進める。

 想いびとと添う幸せ。
 料理人として生きる幸せ。
 決して交わることのないふたつの道の前で、悩み苦しんだ末に見つけた心星。その心星を目指して生きようと決めた。自らの決意を誰よりもまず、想いびとに伝えねばならなかった。
(『夏天の虹』「冬の雲雀」P.11より)

決意をしてもスパッと割り切れないのが恋の悩み。ヒロインの苦しみや惑いが何ともせつなくなる。このせつなさやじれったさが恋愛小説の醍醐味か。

今巻で注目したいのが吉原廓翁屋の料理番の又次。彼の魅力が余すところなく発揮されている。

物語を読み進めるうちに、お約束どおりに、泣かされた。最近とみに涙腺が弱くなっているので、〈悲涙〉とあるものはやばいです。

主な登場人物
澪:「つる家」の若き女料理人
芳:もとは「天満一兆庵」の女将。今は澪とともに暮らす
種市:「つる家」店主
ふき:「つる家」の下足番
りう:「つる家」を手伝う老婆
健坊:ふきの弟で、「登龍楼」に奉公中
おりょう:澪と芳のご近所さんで、「つる家」を手伝う
伊佐三:おりょうの亭主で、大工
太一:おりょうの一人息子
小松原:澪の想いびと。本名は小野寺数馬で、御膳奉行
早帆:数馬の姉
多浜重光:小野寺家の用人
永田源斉:御典医永田陶斉の次男で、町医者
美緒:日本橋瀬戸物町の伊勢屋の娘
翁屋伝右衛門:吉原廓の楼主
又次:吉原廓「翁屋」の料理番
野江:澪の幼なじみ。「翁屋」であさひ太夫
坂村堂:版元
清右衛門:戯作者。曲亭馬琴をモデルにしている
柳吾:料理屋「一柳」の主人で、坂村堂の実父
しのぶ:元「翁屋」の新造菊乃

物語●「冬の雲雀」
悩み苦しんだ末に見つけた心星を目指していきようと決めた澪は、自らの決意を想いびとの小松原に告げる。小松原は「料理は私の生きる縁です」という澪の決意を受け止め、「その道を行くと決めた以上、もはや迷うな」と告げて去っていく…。

「忘れ貝」
三方よしの日に、吉原廓翁屋の料理番の又次が復帰して、いつものにぎわいが戻ってきたつる家。澪は、お客さんに喜んでもらえる、何か新しい料理を考えてみようと、また創意工夫を重ねることを始めた…。

「一陽来復」
その日、澪の身に異変が起きた。料理人としては致命傷になりかねない事態に。苦しみの中でその道を選んだ澪に新たな試練が…。

「夏天の虹」
つる家の助っ人として包丁を振るう又次。相手を斬りつけるに似た鋭いう眼差しは消え、顔つきも柔らかく、声を笑うようになった。そして料理の才も一気に開花した。その又次が、吉原に戻る日がやってきた…。

目次■冬の雲雀――滋味重湯|忘れ貝――牡蠣の宝船|一陽来復――鯛の福探し|夏天の虹――哀し柚べし|巻末付録 澪の料理帖/特別付録 みをつくし瓦版

装画:卯月みゆき
装幀:西村真紀子
時代:文化十二年(1815)霜月
場所:化け物稲荷、金沢町、俎橋、九段坂、昌平橋、竪大工町、日本橋伊勢町、神田旅籠町、三河町、神保小路、吉原、ほか
(角川春樹事務所・時代小説文庫・619円・2012/03/18第1刷・315P)
入手日:2012/03/16
読破日:2012/03/22

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