百日紅 上・下
(さるすべり)
(すぎうらひなこ)
[マンガ]
★★★★
♪杉浦さんの江戸マンガが好きだ。ちゃらんぽらんなくせに憎めない放蕩な若旦那然とした主人公(本書で言えば善次郎)を通して、江戸をビビッドに楽しませてくれる。最近では、NHKテレビの「お江戸でござる」の横丁のご隠居的な活躍が目立ち、マンガを書かなくなってしまったのが残念。
同居する北斎、娘のお栄(作者の分身?)、善次郎(のちの英泉)のトライアングルを中心に物語は展開する。歌川派ながら北斎に傾倒する歌川国直や北斎の弟子、北渓、北明がからむ。絵師たちの生活を淡々とした明るさと幻想を織りまぜ、いきいきと描く傑作。
お栄の描いた地獄絵の鬼が殿様の奥方を悩ます。北斎は、「てめえはいつだって描いたら描きっぱなし”始末”をしない」とお栄を叱り、絵に手を入れる話がいい。