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大盗賊・日本左衛門 上・下

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大盗賊・日本左衛門 上・下

(だいとうぞく・にほんざえもん・じょうげ)

志津三郎

(しづさぶろう)
[伝奇]
★★★

日本左衛門というと、河竹黙阿弥作の『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』で知られる大盗賊。鈴木輝一郎さんの『白浪五人男』(双葉社)でもおなじみ。

志津さんの作品では、残念ながら五人男のほかのメンバーはそのままの形では出てこない。その代わり、柳生流の達人・高田賛四郎(尾張柳生家の師範代で、犬山城主成瀬隼人正の兵法指南・高田三之丞の末孫)や駿府奉行所の夜回り同心赤松総兵衛の息子・総一郎、徳山五兵衛と配下の火盗改方が、登場し、日本左衛門の後を追う。

京の町を3丁(3キロメートル)という長距離にわたって移動しながらの、賛四郎と日本左衛門の剣による対決がみどころ。

表紙カバーの著者写真からは考えられないほど、饒舌な語り口で、物語は進む。随所に、作者のバブル経済への批判など、現在の政治・経済状況や日本人の言動に対する厳しい言葉が散りばめられている。執筆の強い動機になっているのだろうか。

物語●肌を黒色で塗りこめ、面頬(黒い鉄仮面)をつけ、鉢型の兜頭巾を被り、金筋入りの黒羅紗の半纏、黒縮緬の小袖と黒ずくめで、腰に白銀造りの太刀を佩き、白木造りの六尺余りの金剛杖を手にした、六尺近い均整のとれた長身の偉丈夫。これが、東海道筋を荒し廻る日本左衛門の押込みの扮装。ある日、駿府の町外れにある相州屋伝兵衛の屋敷に押し込んだ。その一部始終を見ていた、駿府奉行所の夜回り同心、赤松総兵衛は、一人で日本左衛門に立ち向かったが…。

目次■大序|第一部 東海道人別帖の巻(隠密行/継承者/御七里/自負と見栄/御土居下御側組)|第二部 群盗往来の巻(姫街道/前途多難)|第三部 悪逆無道の巻(地獄耳/絆の糸)|第四部 地獄曼陀羅の巻(潜入図/虚々実々/潜伏/惜別賦/薩た峠/破軍星/落花狼藉)|第五部 断腸花の巻(茨の道)(以上上巻)|第六部 海道双六の巻(往きて帰らず/裏技/剣戟/辻講釈/順逆/攻略/御下知)|第七部 流星光底の巻(火盗改/高熱/幕間/密偵)|第八部 出役攻防の巻(虎穴/忠度利平/道程/庚申勝負/東奔西走/隠密行)|第九部 京の夢大坂の夢の巻(七里結界/鬼哭/懸想人/三十石夜船/奴の小万/夢幻位/網の目/死闘/後始末)|あとがき

カバーイラスト:蓬田やすひろ
時代:元文三年(1738)。
場所:駿府、御油、金谷、掛川、新居ほか。
(光文社文庫・各590円・00/03/20第1刷・上365P、下365P)
購入日:00/03/15
読破日:00/05/20

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