異人館 上・下
(いじんかん・じょうげ)
白石一郎
(しらいしいちろう)
[幕末]
★★★★☆
♪ご贔屓の白石さんの新刊文庫本。朝日新聞に連載時から気になっていたが、単行本時に買い損ねた一冊。ときどき、ボタンを掛け違えたように縁がない本というのはあるが、この作品ももう少しで自分にとってそうなるところだった。
長崎の観光名所グラバー邸を遺したことで知られる(といっても訪れたことはないが)、イギリス人商人トーマス・グラバーの半生を描き、彼を通して、幕末維新の日本と日本人を描いた長篇。大浦のお慶など、白石ファンにはおなじみの人物も登場し、うれしい作品。とくに、前半で描かれる上海の場面で、脇役の林大元が活躍するシーンは、白石ワールドって感じでたまらない。
幕末に活躍し、維新の原動力になった人物たちが、ほとんど二十代だったということは、よく知られているが、その当時、ニッポンにやってきた外国人商人たちもほとんど二十代だったと知り、ちょっとびっくりしている。グラバーも弱冠21歳で日本に来て、ビジネスをスタートしている。まさにベンチャーといったところか。
解説の杉洋子さんは、作家として活躍されているが、白石さんのアシスタントも務めているらしい。彼女の作品も読んでみたくなった。
物語●1859年、トーマス・ブレーク・グラバーは、P・Oラインの定期船オリエンタル号で、二ヵ月半にわたる長い航海を終えて、イギリスから上海にやってきた。そこで、彼は、日本人で林大元と名乗る水夫設教という結社に属する元サムライと出会った。やがて彼らは、日本の長崎へ行くことになった…。
目次■上海の月/黄金の国へ/新開地/グラバー商会(以上上巻)|上げ潮/艦砲射撃/千客万来/危険な坂道/終章/あとがき/巻末エッセー・外灘の月 杉洋子(以上下巻)
カバーデザイン:熊谷博人
題字:岩田信夫
解説:杉洋子
時代:安政六年(1859)
舞台:上海、長崎、横浜ほか
(朝日文庫・上620円、下580円・99/11/01第1刷・上381P、下309P)
購入日:99/10/16
読破日:99/12/26