玄界灘
(げんかいなだ)
白石一郎
(しらいしいちろう)
[海洋]
★★★★
♪「海の日」を記念して買った一冊。白石さんの久々の短編集。「魔笛」以外は海をテーマにした作品ばかりである。基本的に短編は、主人公に感情移入する直前で終わってしまうので苦手なのだが、この作品集は全編通して、白石海洋小説のエッセンスが詰まっていて楽しかった。
とくに、「さいごの奉行」の河津の出処進退の鮮やかさと、「航海者」の三浦按針こと、ウィリアム・アダムズの孤高さが、印象に残った。ぜひ、長編の中で扱ってほしい。
以前から気になっていた「白石一郎海洋小説ベスト10」を発表。
物語●「妖女譚」文久二年の幕府貿易船千歳丸(あの高杉晋作が上海へ渡った船)に、妻を亡くして気鬱になった、長崎商人が乗り込んでいた…。「鎖ざされた海」宝暦六年、長崎に入港した唐船から、日本人が発見されたことから、ある事件が廻船で栄える筑前浜崎浦を見舞う…。「魔笛」紀伊の山中に住む猟師の父娘の話…。「玄界灘」蒙古軍の大船団に敢然と立ち向かう松浦党の佐志一族の若者…。「霧の中」文政二年、長崎の遠見番の名人が霧の中で抜荷船の発見を告げる…。「さいごの奉行」第百二十五代長崎奉行に任じられた河津伊豆守祐邦は、慶応三年十月に長崎に着任した。実はその二日前に大政奉還がなされていた…。「シャムから来た男」鎖国から五十年、林一官が船頭を務める唐船が長崎に入港した。その船でシャムの若者がやってきた…。「航海者」慶長五年三月、イギリス人航海士ウィリアム・アダムズが豊後臼杵湾の港町・佐志生に漂流するように到着した…。
目次■妖女譚|鎖ざされた海|魔笛|玄界灘|霧の中|さいごの奉行|シャムから来た男|航海者