(しんせんぐみしまつき)
(しもざわかん)
[新選組]
♪『壬生義士伝』の影響で、新選組研究のバイブルともいうべき、不朽の実録が読みたくなった。
『新選組異聞』、『新選組物語』(いずれも中公文庫)と、新選組三部作と呼ばれるようになる、最初の著作。
関係者への聞き取りや巷説の現地踏査など、新聞記者らしい行動力で、まとめた新選組実録。修辞や脚色がないだけに、事実の持つ凄味がダイレクトに伝わってくる。なるほど、新選組研究のバイブルと言われることはある。(確か池波正太郎さんもエッセイの中でこの本を勧めておられた)
いろいろな新選組を描いた作品の中で、断片的に知らされてきたことが多いが、改めて通して読んでみると、流れがよくわかっていい。 天然理心流の目録や、慶応三年十一月以来、江戸へ引き揚げて甲州へ出発する三月までの金銭出入帳まで記されていて興味深かった。
「新選組の『選』の字が、選を用うべきか、撰を用うべきかについて、私はどちらでもいいと解釈した。肝心の近藤さえが、時に選を用い、時に撰を用いている。組の総代として公式に会津侯へ差出した書面には撰の字を用いてあるのが多いが、その会津侯が組へ賜る諸書状は、大てい選の字が使ってある。この時代のこうした生活の人達はただ音便に当嵌めて、自分の書きやすい便利な字を書いたようなところがある」(p.12)という箇所を読んで、「新選組」と「新撰組」の二つの表記が出回っている理由が氷解した。
物語●「歴史を書くつもりなどはない。ただ新選組に就いての巷説漫談或は史実を、極くこだわらない気持で纏めたに過ぎない」(p.11)
新選組について、確かな史実と、関係者への聞き取り調査をもとに、再構成し、隊士たちのさまざまな運命を鮮烈に描いた不朽の実録。
目次■一 近藤勇の道場/ニ 勇の家、歳三の家/三 清河八郎策動す/四 八郎の腹の中/五 老中板倉周防守/六 木曾路を行く浪士隊/七 祐天仙之助/八 水府脱藩芹沢鴨/九 壬生の屯営/一〇 憤然袂をわかった勇の一味/一一 茜の陣羽織/一二 押借り/一三 風邪加減の八郎/一四 赤羽橋の暗殺/一五 石坂周造/一六 首をかくす山岡鉄舟/一七 組屋敷を包囲/一八 新徴組/一九 祐天敵を討たる/二〇 敵討異説/二一 関東の無骨十三名/二二 新選組第一次編成/二三 だんだら染の制服羽織/二四 侠士ぞくぞく集まる/二五 島原の角屋/二六 角力を斬る/二七 町方与力内山彦次郎/二八 内山暗殺一件/二九 天忠組/三〇 大和屋焼討/三一 禁門の大政変/三ニ 赤地に「誠」の隊旗/三三 堂々芹沢の態度/三四 土方記念の鉢金/三五 長州の間者/三六 芹沢暗殺さる/三七 池田屋事変/三八 軍中法度書/三九 六角獄の悲劇/四〇 柴司の切腹/四一 勇江戸入/四ニ 伊東甲子太郎/四三 武道師範方/四四 山南敬助の最後/四五 新本営/四六 勇の風采/四七 隊士ぞくぞく斃る/四八 谷万太郎の斬込/四九 四条橋畔/五〇 長州下り/五一 制札事件/五ニ 御陵衛士/五三 佐野の憤死/五四 油小路の屍/五五 龍馬暗殺/五六 天満屋騒動/五七 京を去る/五八 墨染の難/五九 伏見鳥羽/六〇 江戸へ帰る/六一 甲陽鎮撫隊/六二 金銭出納帳/六三 下総流山/六四 最後の日/六五 宮古湾/六六 勇の墓/解説 尾崎秀樹