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返り忠兵衛 江戸見聞 湿風烟る

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返り忠兵衛 江戸見聞 湿風烟る返り忠兵衛 江戸見聞 湿風烟る
(かえりちゅうべええどけんぶん しっぷうけぶる)
芝村凉也
(しばむらりょうや)
[武家]
★★★★☆

文庫書き下ろし。

立身流の剣法の遣い手で、遠州定海藩出身の若侍が活躍する痛快時代小説シリーズの第二弾。

藩内の抗争で兄を殺されて、江戸に出てきた筧忠兵衛。本人の知らぬ間に、藩庁により謀叛人の汚名を着せられて、「返り忠兵衛」の呼び名で呼ばれるようになっていた。

「筧様は、藩庁により謀叛人の汚名を着せられましたが、その誤解が今は、民にまで広がっておることをご存じですか。返り忠兵衛、そうした呼び名が、今、定海のご城下や村々で、子供らが歌う戯れ唄に乗せられてござります。今では、定海の流行唄のようになり、耳にせぬ日はないほどにござりますぞ。
 あなた様を貶めることで、現在雌伏している藩内改革派全体の評判を落とす――これも、藩政を牛耳る者どもの悪だくみの一つなのかもしれません。筧様、このままにしてはおけますまい」

(『返り忠兵衛 江戸見聞 湿風烟る』P.70より)

損得を考えずに、正しいことに向かって真っ直ぐに進む忠兵衛は、町人たちの揉め事を仲裁していくうちに、多くの人たちを肩入れしたくなる魅力的な人物に成長していく。江戸を舞台にしたビルドゥグスロマン(青春小説)で、読み味がいい。

定海藩主樺島直篤の命を受けた御側御用取次神原采女との対決が見所。

主な登場人物

筧忠兵衛:定海藩の御蔵奉行の弟で、部屋住
筧壮太郎:忠兵衛の兄で、定海藩の御蔵奉行、藩内改革急進派を押さえようとして殺される
紗智:定海藩で御前様と呼ばれる影の実力者に仕える奥女中
洲崎屋の番頭
浅井蔵人:御家人
健三:蔵人の使用人
与茂平:蔵人の使用人
勝弥:深川の芸者
おしげ:忠兵衛の住む長屋の住人
おまつ:忠兵衛の住む長屋の住人
弥太郎:おまつの亭主で大工
おみち:おまつの娘
甚吉:町火消しよ組の平鳶
玄三郎:町火消し一番組頭取
吉郎次:町火消し九番組頭取
佃屋彦右衛門:魚問屋組合世話役
進二郎:日本橋本町の料理屋角枡の主
友次:神田鍛冶町の料理屋翁庵の主
清兵衛:鉄砲洲の廻船問屋洲崎屋の主
小山内伝兵衛:南町奉行所年番方与力
加寺武右衛門:南町奉行所町火消人足改方与力
岸井千蔵:南町奉行所定町廻り同心
柳井半之丞:南町奉行所高積見廻り同心
松倉の磯吉:松倉町を縄張りとする御用聞き
樺島直篤:定海藩主
神原采女正:定海藩主御側御用取次
内藤小六:神原家の家士
河原権三郎:定海藩江戸留守居役
佐々木織部:定海藩江戸家老
西方東吾郎:定海藩上屋敷用人
藤沼主馬:定海藩小姓
角田道之介:定海藩小姓

物語●江戸町火消しと日本橋魚河岸衆の喧嘩仲裁を成し遂げた筧忠兵衛は、秘かに定海から抜け出してきた奥女中紗智になじられながらも、町人たちの揉め事仲裁で江戸での生計を立てていた。そんな中で、御家人浅井蔵人の使用人で忠兵衛の世話を焼く与茂平がかどわかされる事件が起こった…。

目次■第一章 仲裁屋稼業/第二章 蔵宿師蠢動/第三章 御側御用取次の洞察/第四章 あからさまな陥穽/第五章 鑓の林

カバーイラストレーション:浅野隆広
カバーデザイン:長田年伸
時代:明記されず。(定海を出てほぼ三月後)
場所:海辺大工町、南槙町、向島の庵崎、本所北割下水、定海藩上屋敷(小川町)、深川櫓下、日本橋通旅籠町、鉄砲洲、定海藩下屋敷(駒込・白山御殿跡地近く)、馬鞍横丁、ほか
(双葉社・双葉文庫・600円・2011/07/17第1刷・291P)
入手日:2012/05/02
読破日:2012/05/18

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