風の武士 上・下
(かぜのぶし)
司馬遼太郎
(しばりょうたろう)
[伝奇]
★★★★
♪後期の歴史小説界のドン、晩年の超一流文化人のイメージが強くってちょっと敬遠気味だった司馬さんにこんな作品を書いていた時期があったなんて。嬉しくなってしまった。この作品は、「週刊サンケイ」(今のSPA!か)に連載したもので、当時(1960年)、司馬氏は、サンケイ新聞(この当時はカタカナで表記していた)の編集部長で37歳の頃らしい。
軽忽で、うそがつけない、甘っちょろい性格の主人公・柘植信吾のキャラクターが、自分とよく似ていて、読んでいて他人事とは思えなかった。もっとも、自分はこんなにもてないが…(^^;)
また、信吾に絡む三人の女性、ちの、お勢以、お弓が個性的でいい。
物語の重要な鍵を握る、隠れ里(エルドラド)の名前が「安羅井(やすらい)」は、イスラエルから来ているのかなぁ。とにかく、わくわくする伝奇ロマンだ。
物語●幕末のある日、伊賀同心の末裔で貧乏御家人の弟・柘植信吾は、異相の山伏とすれ違った。その瞬間、不吉な予感を感じる。やがてすぐに、信吾が代稽古を務める練心館で変事が起こり、また、幕府の高官から秘事を託されることになる…。
目次■遭った男/暗殺剣/蓮の音/練心館の秘密/退耕斎の正体/伊賀者/天狗の里/四番目の顔/隠密第一日/伊賀の刀法/老忍/仏国土/丹生津姫草紙(にぶつひめぞうし)/黒い影/異変/卵殻/旅へ/その男/安羅井人/神奈川の宿/流れ/青い火/三条大橋(上巻)
新選組/拾う神/幻影の城/早川夷軒/源聖寺坂/大坂蔵屋敷/薬師堂/脱出/変身/隠し国へ/大和路/国栖(くす)ノ国/月の峰/猟師小屋/高力伝次郎/変心/殺陣/岩室/安羅井国/野猿/浦島/頭上の敵/月の出の浜/物語に賭けた志―岡庭昇/年譜(下巻)