(ひとでなし・くじやどじけんかきとめちょう)
(さわだふじこ)
[捕物]
★★★☆☆
♪江戸時代の弁護士事務所である公事宿の居候・田村菊太郎が活躍するシリーズ第六作。今回、版元が幻冬舎(今までは廣済堂出版)に移ったのが気になる。
シリーズの巻数が進んできたこともあり、主人公を引き立てるレギュラー登場人物たちの個性がだいぶはっきりと現れるようになったと思う。田村菊太郎が居候する公事宿「鯉屋」の丁稚の鶴太や手代の喜六、下代(番頭)の吉左衛門などの活躍にもスポットを当てている。
澤田さんの作品を読むと、人間として何が本当に大切かを思い起こさせてくれる。いじめや冤罪、親と子、主と奉公人の関係など、いろいろ考えさせられる。とくにニュースで殺伐な事件を眼にした後などは、癒されげんきづけられる気がする。
物語●「濡れ足袋の女」風邪をこじらせて寝付き、店を休んでいた、鯉屋の下代・吉左衛門は、長屋の板屋根の下で、四十歳近くの女が雨宿りしているのを見かけた…。「吉凶の蕎麦」菊太郎は六角通りの北側で小ぶりの新しい家普請現場で、夜泣きそば屋の七兵衛と出会った…。「ひとでなし」二条城のお堀に若い女性が身投げして死んでいるのを小者番士が見つけた…。「四年目の客」鯉屋の主・源十郎と丁稚の鶴太は、一膳飯屋で酒と食べ物で温まっていた。そこで、旅装束の中年男が誤って銚子を割ってしまい、店の小僧からすぐさま代金を請求される場面に出くわした…。「廓の仏」北野遊廓随一の遊女屋で、風呂焚きを兼ね雑用を果たしている市蔵は、七、八人の子どもたちが一人の子をいじめているのを注意した…。「悪い錆」お信の長屋の人たちが、物乞いのような薄汚れた十徳姿の老人を拾ってきた…。「右の腕」夜の捕物で、東町奉行所の同心組頭・田村銕蔵(菊太郎の異腹弟)は、押込み強盗を捕り逃してしまった…。
目次■濡れ足袋の女|吉凶の蕎麦|ひとでなし|四年目の客|廓の仏|悪い錆|右の腕|あとがき
時代:文化十三年ごろか(田村菊太郎と初めて出会ったとき、7歳だったお清(お信の娘)が11歳になっている)
場所:大宮姉小路、六角猪熊町、骨屋町、柳馬場通り、二条城、西洞院通り錦小路、六角牢屋敷、北野天満宮、三条大橋東詰め・法林寺脇ほか
(幻冬舎・1,600円・00/12/10第1刷・318P)
購入日:00/11/25
読破日:00/12/13