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奈落の水 公事宿事件書留帳 四

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奈落の水 公事宿事件書留帳 四奈落の水 公事宿事件書留帳 四
(ならくのみず くじやどじけんかきとめちょう4)
澤田ふじ子
(さわだふじこ)
[捕物]
★★★★☆

公事宿・鯉屋の居候・田村菊太郎が活躍するシリーズ第4弾。シリーズもこのあたりに入ると、かなり登場人物たちが個性を発揮して自由に動き回ってきて楽しい。

主人公の菊太郎は、かつての東町奉行所同心組頭を父にもつが、祇園の茶屋娘を母にもち、若い頃に(いまでも十分若いのだが)わざと遊蕩を尽くした末に、家から金を持ち出し、京を逐電し、七年ほど諸国を放浪した末に、現在は、父に恩をもつ鯉屋に厄介になっている。その父は、中風で病床につき、田村家は本妻の子で弟の銕蔵が家督を継ぎ、与力組頭を務めていた。

菊太郎は、かつて町道場を開く岩佐昌雲に新影流を習い、戻り橋の綱と異名されるほどの剣の名手で、差料は師から譲られた千手院康重である。

弟の銕蔵、鯉屋の主・源十郎や禁裏付きの赤松綱、隣の公事宿・蔦屋に帳付けとして雇われている浪人・土井式部らが、菊太郎を助ける。とくに源十郎と菊太郎の掛け合いが楽しい。

清水の舞台から飛び降りる―という言葉があるが、江戸時代に実際に清水寺で実際に舞台から飛び降りた人の記録を取っていたとは驚きだ。元禄九年には、一年間に6人が飛び降りたらしい。しかも、そのうち一人は無事だったらしい。澤田さんの本を読むと、人間ドラマが堪能できるばかりでなく、自分の知らなかった京のことがいろいろわかり、ありがたい。

物語●「奈落の水」研ぎに出していた大刀を取りに出かけた帰りに、菊太郎は、若い女から刺を含んだ鋭い言葉をかけられた…。「厄介な虫」関東御呉服所の後藤家の総番頭を務め隠居した老人が、かつて懇ろにしていた女子を行方を尋ねるが…。「いずこの銭」下京の長屋に小判が投げ込まれる事件が頻発する…。「黄金の朝顔」鯉屋の同業の公事宿の女中が黄金の花が咲くという朝顔を入手した…。「飛落人一件」六波羅道に清水寺の舞台から墜落死した、身元不明の男がさらされた…。「末の松山」奈良大工の元締めと彦根二十万石が、井伊家京屋敷の普請をめぐって訴訟騒ぎになる…。「狐の扇」伏見稲荷で大店の旦那がならず者めいた男から、光悦と宗達の合作の古びた扇子を騙しとった…。

目次■奈落の水|厄介な虫|いずこの銭|黄金の朝顔|飛落人一件|末の松山|狐の扇|あとがき

>題字・装画:蓬田やすひろ
カバー装幀:原田幸生
時代:文化十二(1815)年
舞台:大宮通り姉小路界隈、三条・樵木町、法林寺裏。
(廣済堂出版・1600円・97/11/15第1刷・310P)
購入日:97/11/1
読破日:97/11/11

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