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幾世の橋

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幾世の橋
幾世の橋

(いくよのはし)

澤田ふじ子

(さわだふじこ)
[市井]
★★★★☆☆

ページをめくるのがもどかしくらい面白い作品は多いが、ページを繰るのがもったいない作品は少ない。「幾世の橋」は、そんな貴重な一冊。毎夜ベッドの中で一章ずつ残りの紙数を惜しみつつ読んだ。

藤沢さん亡き後の市井ものは、やはり澤田さんにおまかせかな。

植木職人になる重松、その幼なじみで刀研ぎ職人になる八十吉、重松に思いを寄せる篠山藩京屋敷に下女奉公しているお太禰(たね)、3人の若者を中心とした、名作『虹の橋』に続く感動のビルドゥングスロマン。

かつて立花師を主人公にした作品を描いた作者が、今回は庭師(室町時代は、「河原者」として蔑まれていた)を正面から扱っていて興味深い。

物語●長屋の住人の間で孝行息子で知られる主人公・重松には、出生の秘密があった。数奇な運命を生きていく重松が、植木屋に奉公し優れた庭師へ成長していく姿を、京の文化と市井に生きる多彩な登場人物の哀歓を織り交ぜて描く長編時代小説。

装幀装画:蓬田やすひろ
時代:宝暦十(1760)年晩秋
(新潮社・2300円・1996/11/30)
購入日:1997/02/27
読破日:1997/03/05

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