(ふゆのつばめ しんせんぐみがいでん きょうとまちぶぎょうしょどうしんにっき)
(さわだふじこ)
[捕物]
★★★☆☆☆ [再読]
♪以前に新潮文庫版を読んだが、その後絶版になり残念に思っていた作品。幕末の京を舞台にした連作捕物帳。
八王子の千人同心の二男で、武州日野に生まれ、十八歳のとき、江戸南町奉行所同心大仏(おさらぎ)権栄門の養子になり、南町奉行黒川備中守盛泰の口利きで京都東町奉行所同心として着任した大仏伝七郎が主人公。江戸・小石川小日向柳町の試衛館主近藤周助に、天然理心流の剣を学び、土方歳三や近藤勇、山南敬助、沖田総司らと竹刀を交えてきたというところがミソ。
幕末の動乱や新選組の活躍を綴りながら、京の市井で起こる事件を描くところが面白い。しかも事件解決の糸口を求めて新選組の屯所へ土方らを訪ねていったりもする。
物語●「冬のつばめ」表具師宗徳の家から出火し、焼け跡から真っ黒になった宗徳の焼死体が発見され、行方不明になった弟子の源次郎に嫌疑がかかった…。「夜寒の寺」鹿ケ谷村の庵に住む出家者・妙円が行方知れずになり、室内はひどく荒らされた。後には2首の発句が残されていた…。「池田屋の虫」祇園祭りの宵宮を控えてにぎわうところに、枡屋喜右衛門なる人物の捕縛が知らされ、奉行所の役人に緊急召集がかかった…。「高瀬船」伝七郎と配下の岡っ引宗助は、与力の篠田平兵衛に誘われて慈眼寺に墓参りに出かけた…。「人斬り」陶器商の肥前屋に押しこみ強盗が入り、店の者を人質に立てこもった…。「あいらぶゆう」二条の町番屋の弥七は、長屋の隣家の夫婦喧嘩の仲裁に呼ばれた…。「七条月夜」扇商の番頭利蔵は、夜なべ仕事を終えた後、油小路の斬り合いを目撃した…。「御用盗」御用盗(攘夷や徳川家に味方するためなどと勝手な理屈を並べて、商家に押し入って金を強要し、ときには一家を殺害している凶賊)が頻発する中で、茶商に押し込み強盗が入った…。
目次■冬のつばめ|夜寒の寺|池田屋の虫|高瀬船|人斬り|あいらぶゆう|七条月夜|御用盗|解説 大野由美子|澤田ふじ子 著書リスト