女狐の罠 足引き寺閻魔帳
(めぎつねのわな・あしびきでらえんまちょう)
澤田ふじ子
(さわだふじこ)
[痛快]
★★★☆☆☆
♪「足引き寺閻魔帳」の第2作。いよいよ、池波正太郎さんの「藤枝梅安」の京版って感じがしてきた。宗徳、蓮根左仲、与惣次、お琳の四人と一匹(豪)が、怨みを抱えて死ぬ男や世の不条理に泣く女の無念をはらす、「必殺もの」だ。京のどこかに、法で裁けぬ悪人の足を引っ張り、怨みやつらみを晴らしてくれる足引き寺があると昔からいわれていた。人は、ここぞと思った寺の賽銭箱に金を投げ入れ、足引きを依頼するのだ。
殺伐としがちなテーマだが、澤田さんの手にかかると、京の風俗や故事が楽しめる人情譚となる。
小さい頃から動物を飼ったことがないせいか、あまり犬をかわいいと思ったことはないのだが、この作品の紀州犬・豪を見ていると、やっぱりかわいいと思ってしまう。
◆主な登場人物
宗徳(そうとく):知恩院末寺・地蔵寺の住職。かつて隠岐島に配流される。旧名・黒田小十郎
蓮根左仲(はすねさちゅう):西町奉行所同心。宗徳の幼なじみで親友
与惣次:左仲の手先。羅宇屋
お琳:四条派の町絵師。吉岡流小太刀の遣い手
豪:宗徳が仔犬の頃から育てた紀州犬
黒田大十郎:西町奉行所与力。宗徳の兄
枡屋喜左衛門:四条の旅籠の主人
お貴和:枡屋の養女分で左仲と恋仲
物語●「足許の首」お琳の長屋に住む駕籠舁きの駕籠から刺殺体が発見された…。「女狐の罠」左仲は西土手の刑場で処せられた男の仕置きが気にかかっていた…。「なさけが仇」居酒屋・鶴静で与惣次は、酔って島帰りと騒いでいる男を助けた…。「噂の烙印」豪は賽銭泥棒の少年に地蔵寺の御飯をご馳走する…。「闇の梯子」豪は地蔵寺の賽銭箱に小銭を投げる女に不審を感じ、尾行をはじめた…。「真贋の瀧」与惣次は居酒屋・鶴静で、場所に不釣り合いなキセルを使う職人風の男の姿が目についた…。「果ての空」地蔵寺にかつて隠岐島で宗徳といっしょだった男が訪ねてきた…。
目次■第一話 足許の首|第二話 女狐の罠|第三話 なさけが仇|第四話 噂の烙印|第五話 闇の梯子|第六話 真贋の瀧|第七話 果ての空
装幀:東京図鑑
時代:天明六年(1786)
舞台:京・堺町綾小路、四条、東洞院蛸薬師、烏丸仏光寺、北車屋町、三条樵木町。
(徳間書店・1,500円・1998/04/30第1刷・269P)
購入日:98/04/17
読破日:98/04/29