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名君の碑 保科正之の生涯

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名君の碑 保科正之の生涯名君の碑 保科正之の生涯
(めいくんのいしぶみ・ほしなまさゆきのしょうがい)
中村彰彦
(なかむらあきひこ)
[武家]
★★★★☆

タイトルの「名君」という言葉には抵抗があったのだが、装画に使われている円山応挙の金ぴかの絵と、今月、時代小説の新刊本が少ないせいで、読んでみる気になった。ビジネスマンの処世訓的な話はいやだなあと思いつつ、読みはじめる。気がつくと物語にぐいぐい引き込まれてしまった。

保科正之と聞くと、優等生的なイメージしかなかったが、波瀾万丈の出生の秘密をもっていて驚きだ。正之(幸松)が生れるまでの物語がとにかくいい。半村良さんの『江戸打入り』(集英社)に通ずる、江戸揺籃期の雰囲気が何とも心地いい。

後半は、童門冬二さんの『小説上杉鷹山』(学陽文庫、集英社文庫)のようで、ちょっと感動的だ。

物語●お静は北条牢人の娘に生れたが、ふとしたきっかけで、江戸城の大奥に入ることになった。やがて、将軍秀忠の眼にとまるが、正室お江与の方に睨まれることになる…。そしてお静に子が産まれる。幸松(のちの保科正之)だ。

目次■お静の方/幸松誕生/高遠まで/信濃さま/将軍家光/馬見ヶ崎川/異変は東西に/遺命忘るまじ/花ひらく日々/振袖火事/裏切り/道は一筋/天翔ける時/あとがき

カバー装画:円山応挙「藤花図」(根津美術館蔵)
時代:慶長十三年(1608)
場所:板橋・竹村、神田白銀丁、江戸城、大牧、信州高遠、外桜田門
(文藝春秋・2,286円・98/10/20第1刷・642P)
購入日:98/10/30
読破日:98/11/08

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