木枯し紋次郎(五) 夜泣石は霧に濡れた
(こがらしもんじろう5 よなきいしはきりにぬれた)
笹沢左保
(ささざわさほ)
[股旅]
★★★☆☆☆
♪1ヵ月に1冊ずつ刊行される「木枯し紋次郎」シリーズに合わせて、毎月1冊ずつ読むことにしたのだが、ついに9月は読み切れずに10月になってしまった。未読の本が溜まりすぎて、精神衛生上よくないなあって、最近痛感している。
今まで、比較的時系列的に掲載されてきた、紋次郎作品だが、5巻目に入り、時代設定が前後するようになってきた。この辺から、TV放映が始まり爆発的なブームになってきた頃かな。まあ、スーパーヒーローに年は関係ないか。
この巻では、飯岡の助五郎や大前田の英五郎らの有名な渡世人の名前が登場している。この先、実際に関わっていくようになるのだろうか。もちろん、紋次郎は関わり合いになりたくないだろうが。
「駈入寺に道は果てた」では、上州新田郡の徳川山満徳寺が登場する。鎌倉の松岡山東慶寺とならぶ関東の縁切寺(駈込寺、駈入寺ともいう)だ。東慶寺は、『駈込寺蔭始末』(隆慶一郎)や『尼寺二十万石』(宮本昌孝)、『柳生忍法帖』(山田風太郎)などの舞台にもなっているが、満徳寺の方は描かれることが少なかったので、興味深かった。
また、紋次郎の幼なじみや、隠し子?も登場するので、紋次郎ファンにはたまらない一冊。西上さんの解説も今までの話を整理するのにピッタリか。ただし、いきなりこの本を読んだ人にはちょっと辛い。
物語●「馬子唄に命を託した」(天保十年九月)三国峠で紋次郎は、黄色い声で威勢よく怒鳴る馬子と出会う…。「海鳴りに運命を聞いた」(時代設定不明)九十九里の砂浜で二人の渡世人が死力を尽くして闘っていた…。「夜泣石は霧に濡れた」(天保九年九月)紋次郎は、初めての山越えで道に迷い、湯檜曾川に沿った樹海をさまよい空腹にあえいでいた…。「駈入寺に道は果てた」(天保九年十一月)紋次郎は松井田の手前で、宿屋の若旦那に護衛を頼まれるが…。「明鴉に死地を射た」(天保十年二月)佐倉に近い成田道で、紋次郎は、死骸の前で酔っ払っている浪人に出会う…。
目次■馬子唄に命を託した|海鳴りに運命を聞いた|夜泣石は霧に濡れた|駈入寺に道は果てた|明鴉に死地を射た|解説 西上心太