司法卿 江藤新平
(しほうきょう・えとうしんぺい)
佐木隆三
(さきりゅうぞう)
[明治]
★★★☆☆☆
♪解説の古川薫さんも書いているように、半ばまで読んでいくと肩透かしを食らわされた感じを抱いてしまう。タイトルにある江藤新平がほとんど登場せず、佐賀の乱にもプロローグで触れられるだけで、なかなか描かれないのである。
ところがやがてこれが、性急な印象であることに気づかされる。われわれは薩長勢力の力と政権抗争の凄さをまざまざと見せつけられるのである。
佐木隆三さんといえば、『復讐するは我にあり』で直木賞を受賞し、裁判もの、実録ものの第一人者であるが、この作品でもその調査力を遺憾なく発揮している。
◆主な登場人物
小野善助:京都の豪商「小野組」七代目
小野善右衛門:小野組総支配人
谷口起孝:京都府七等出仕(元膳所藩士)
長谷信篤:初代京都府知事(元長州藩士)
槙村正直:京都府副知事格の参事
江藤新平:司法卿
大久保利通:大蔵卿
井上馨:大蔵大輔
河野敏鎌:司法少丞(五等官)
飯田好武:京都裁判所聴訟課権少解部
犬塚重遠:京都裁判所聴訟課長
北畠治房:京都裁判所長
三条実美:太政大臣
木戸孝允:参議
物語●明治七年、初代司法卿の江藤新平は「佐賀の乱」の首謀者として、佐賀裁判所で死刑判決を受け、即日、斬首の上、梟首された…。彼はなぜ栄光の座を捨てて下野したのか。司法権の独立に辣腕をふるって、法の正義を貫いた江藤は、薩長勢力と対立して悲劇的な最後を迎える。事件の真相を裁判資料を元に明らかにしていく…。
目次■プロローグ/第一部 転籍拒否/第二部 違令違式/第三部 参座裁判/エピローグ/参考文献/あとがき/解説 古川薫