居眠り磐音 江戸双紙 探梅ノ家
(いねむりいわね・えどそうし・たんばいのいえ)
佐伯泰英
(さえきやすひで)
[痛快]
★★★★
♪深川六間堀の金兵衛長屋に住む浪人・坂崎磐音が活躍する『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズの第12弾。梅の季節にピッタリのタイトルの作品。
佐伯さんの時代小説には、幾つかのシリーズがあるが、この『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズの特徴は、「春先の縁側で日向ぼっこをしている年寄り猫」と称される、一見威圧の構えもなく自然のままの伸びやかな剣。そして、剣と同様に春風駘蕩とした性格の主人公坂崎磐音。二人の親友と許嫁を相次いで失い、家老の嫡男から浪人へと身を落としながらも、悲しみや苦労が表に出てこない、絵空事のような爽やかさが魅力だ。また、最近は、磐音が江戸近郊を小旅行するのも楽しい趣向。
今巻では、磐音が通う直心影流佐々木玲圓道場に、軍鶏のような若い弟子(松平辰平と重富利次郎)が入門したり、白梅屋敷のお姫様が登場したり、新しいキャラクターが加わり、一段とにぎやかになった。
読みはじめたのが梅の季節で、ピッタリのタイトルになっていた。
物語●深川六間堀の金兵衛長屋に住む浪人・坂崎磐音は、横山町の湯屋加賀大湯で、背中に吉祥天の彫り物がある老人を見かけた。湯屋でさっぱりした後、両替商の今津屋の老分・由蔵のボディガードとして、市谷の鳥羽藩の江戸中屋敷まで出かけた。由蔵の用は、そればかりでなく、師走に鎌倉・建長寺参りのお供を頼まれた。その夜、米沢町の今津屋に泊まった磐音は、半鐘の音に起こされた。火元付近を確かめに行き、火事場に近付こうとした磐音は、江戸四宿で暗躍している黒頭巾の押し込み一味を警戒中の南町奉行所の年番方与力笹塚孫一に気づいた…。
目次■第一章 吉祥天の親方/第二章 水仙坂の姉妹/第三章 師走の騒ぎ/第四章 二羽の軍鶏/第五章 白梅屋敷のお姫様