(いねむりいわね・えどそうし・えんかのとうげ)
(さえきやすひで)
[痛快]
★★★☆☆☆
♪「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズの第9弾。前作読了時に、次回作のタイトルをいろいろ考えてみたが、その中の一つ「峠」を使ったものになりちょっとうれしい気分。
「密命」、「鎌倉河岸捕物控」、と並び、快調なペースでシリーズ作品を著作し、時代小説作家として脂の乗った活躍ぶりを示す、佐伯さんの人気シリーズ。主人公の坂崎磐音は、西国の小藩の家老の息子ながら、故あって脱藩し、江戸深川の鰻屋で一日百文の鰻割きの仕事をする。育ちに似合わず腰が低く、律儀に仕事を続けながら、得意の剣で周囲に振りかかった難事件を解決する。何とも爽やかで、魅力的な主人公である。
また、磐音は、用件ができると旅に出ることが多い。題名にある峠と付くように、青梅と秩父へと旅するが、その目的もやくざの用心棒という非常識なもの。しかしながら、磐音の仲間たちは目くじらを立てながらも最後はゆるしてしまう。
脱藩したとはいえ、旧藩の豊後関前藩主福坂実高に対して常に忠義を尽くすところも好感度アップにつながっている。今回の山場の一つは、豊後関前藩の物産を積んだ一番船が江戸に向けてやってくるところ。
物語●坂崎磐音の深川暮らしの師匠で鰻取りの幸吉少年が、鰻屋の宮戸川で奉公を始めた。出前に行った幸吉が騙りに遭い、鰻の蒲焼五人前と釣りの三分を騙し取られた。磐音は犯人を捕まえ、釣り銭を取り戻すように、幸吉に頼まれた。その数日後、菓子鋪でも騙りに遭い、草餅と釣り銭を騙し取られ、奉公の娘が身投げをするという事件が起きた。
同じ頃、吉原では入れ札で太夫三人を選ぶということで、話題が持ち切りになった。北尾重政が浮世絵に描いて売出中の花魁・白鶴こと、磐音の元・許嫁の小林奈緒の前評判が高かった…。
目次■第一章 望春亀戸天神/第二章 仲ノ町道中桜/第三章 春霞秩父街道/第四章 星明芝門前町/第五章 八丁堀三方陣