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自鳴琴からくり人形 江戸職人綺譚

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自鳴琴からくり人形 江戸職人綺譚自鳴琴からくり人形 江戸職人綺譚
(じめいきんからくりにんぎょう・えどしょくにんきたん)
佐江衆一
(さえしゅういち)
[市井]
★★★★☆☆

江戸の町を舞台に、技に生きる職人たちの世界を哀歓を込めて描いた名品「江戸職人綺譚」の第2弾。「装腰綺譚」は、『子づれ兵法者』(講談社文庫)に収録された作品で、江戸職人ものの記念すべき第一作。

今回も胸に染み入るような哀歓溢れる佳品ぞろいである。綿密な取材の元に描かれた職人の世界のディテールが興味深く、作品に深みを与えている。とくに『亀に乗る』は、鼈甲細工で張型(女性用の悦具)を作る職人の話であるが、キワモノになりそうな題材を扱いながら、淫らがましい感じを与えず、誠実で滑稽でどこか哀しい作品に仕上がっている

物語●「一椀の汁」柳橋の料理茶屋・川長に奉公する梅吉は、1尾の値が二両一分という高価な初鰹を親方愛用の庖丁を使って、料理する機会を与えられた…。「江戸鍛冶注文帳」道具鍛冶の定吉は、芝神明の大工の棟梁・安五郎から大鉋の注文を受けた…。「自鳴琴からくり人形」鎰役同心の黒田三右衛門は、手鎖の鍵をふところに、からくり師庄助の長屋を訪ねた…。「風の匂い」団扇師の店に奉公して間もなく丸四年になる安吉は、今度の薮入りを心待ちにしていた…。「急須の源七」鍛金師として、急須をつくらせたら右に出る者はいないといわれ、“急須の源七”と呼ばれている還暦を迎える職人源七は、家を飛び出し行方知れずの長男のことを思っていた…。「闇溜りの花」川開きの花火の上がる中で、役人が心臓を一突きされて死んだ…。「亀に乗る」鼈甲職人の夫の細工台を片付けていた女房のおしずは、抽出の奥におさめられていた、紫縮緬の袱紗に包まれた、長さ六寸ほどのものを見つけた…。「装腰綺譚」深川の小料理屋の女中・お仙は、新大橋で六尺近い巨躯の侍が、雪の中で川に向けて剣術道具一式を放り投げることころ見かけた…。

目次■一椀の汁 庖丁人・梅吉|江戸鍛冶注文帳 道具鍛冶・定吉|自鳴琴からくり人形 からくり師・庄助|風の匂い 団扇師・安吉|急須の源七 銀師・源七|闇溜りの花 花火師・新吉|亀に乗る 鼈甲師・文次|装腰綺譚 根付師・月虫|あとがき

装画・挿画:高橋勲
装幀:新潮社装幀室
時代:「江戸鍛冶注文帳」嘉永三年。「自鳴琴からくり人形」安政二年。「闇溜りの花」明治二年。「装腰綺譚」文政三年。
場所:「一椀の汁」柳橋、「江戸鍛冶注文帳」厩の渡し。「自鳴琴からくり人形」浅草西仲町。「風の匂い」高砂町、深川三間町。「急須の源七」道灌山。「闇溜りの花」両国橋。「亀に乗る」日本橋通り一丁目。
(新潮社・1,600円・00/12/20第1刷・293P)
購入日:00/12/28
読破日:01/01/31

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