吉原御免状
(りゅうけいいちろう)
[伝奇]
★★★★☆☆☆ [再読]
♪今年は、隆慶一郎さんの作品をもう一度読み返してみたいと思っている。ぼくが時代小説の面白さを初めて知ったのは、池波正太郎さんの作品のキャラクターたちのせいである。時代小説の深さを知ったのは、藤沢周平さんの作品に出合えたおかげである。そして、時代小説の自由さ、新しさを知り、ハマッてしまったのは隆さんの作品があったからだ。
そんな隆さんの作品の中でも、「吉原御免状」はもっとも思い入れ深い一冊である。衝撃的でさえある。写楽の浮世絵を見た江戸の町人たちもこんなだったのかもしれない。
時代小説に独自の史観(網野善彦さんの歴史学がベースになっている)を持ち込み、虚構の中でその史観を再構築してみせる。なんて書くと、難しそうに聞こえるが、エンターテインメント性たっぷりにわかりやすく読ませてくれるのである。本当に頭が下がる。
再読してみて気が付いたのだが、吉原内の地図と周辺の地図が挿入されていた。これは、時代小説を読むときに大いに参考になる。
物語●明暦三年、二十六歳の松永誠一郎は、師の宮本武蔵の遺言により、肥後より江戸・吉原へ庄司甚右衛門を訪ねて行った…。奇しくもその日は、新吉原の営業初日だった。誠一郎は、そこで謎の老人・幻斎に親切にされるが、知らず知らずのうちに柳生一族と吉原の抗争に巻き込まれることになる…。
目次■日本堤/みせすががき/仲の町/水戸尻/待合の辻/大三浦屋/亡八/皇子暗殺/首代/猪牙/初会/鼓/野分/大和笠置山/土手の道哲/三ノ輪/御免色里/馴染/おしげり/中田圃/柴垣節/八百比丘尼/傀儡子一族/紀州攻め/苦界/大鴉/影武者/関ケ原/北西航路/杜鵑/勾坂甚内/三州吉良/樹々の音/勝山最期/凍鶴/傀儡子舞/歳の市/後記/解説 磯貝勝太郎
カバー:西のぼる
解説:磯貝勝太郎
時代:明暦三年(1657)年八月十四日
舞台:吉原周辺、柳橋ほか。
(新潮文庫・544円・89/9/25第1刷、97/1/10第24刷・429P)
購入日:1997/06/20
読破日:1998/01/05
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『吉原御免状』(隆慶一郎・新潮文庫)