水の砦 福島正則最後の闘い
(みずのとりで ふくしままさのりさいごのたたかい)
(おおくぼともひろ)
[伝奇]
★★★☆☆☆
♪第5回時代小説大賞受賞作。TVドラマ化(市川染五郎主演、確か宇津井健が正則を演った筈)を機会に読み始めるが、途中で飽きてホカしておいたのを、今月になって気が変わり初めから読み直しました。
『本多の狐』や『神州魔風伝』などでおなじみの本多上野介正純がヒール(悪役)として登場し、新しい居城となる宇都宮城の釣天井疑惑も題材として描かれているので嬉しい。
猿楽の足捌きから発祥した体術「砕動風」を鍵として使い、真言密教→山岳信仰(金山)→山の者→傀儡舞い→能楽者→大久保長安という図式を明らかにした点は、隆慶一郎ファンにとってスッキリ理解できるところ。
物語●広島の太守福島正則は北信濃の高井野に配流されて1年がたつ。配所を守る家臣団は三十名弱と手薄なもの。そんな中で嫡子忠勝が暗殺された。刺客を送ったのは、大久保党の大蔵伝内の指摘で、本多上野守正純らしい。そこで、正則の「喧嘩」が始まった。
忠勝の近習高月彦四郎、福島陣屋を警護する陰衆と神崎伝二郎、大久保党の雪乃介、刺客を指揮する鬼堂玄蕃と謎の女お涼、「城崩し」の技能に長じた番匠新左衛門尉と孫娘楓…、多彩な人物が登場し、正則と正純の喧嘩はクライマックスへ。