(きたはらあいこへん はんしちとりものちょう)
(おかもときどう)
[捕物]
★★★☆☆
♪4月からのNHKテレビ金曜時代劇での放映を機会に、この本を手にした。古臭い感じがしていたし、捕物帳の古典のようになっていたので、今まで敬遠していたのだが…。
現役を引退した半七老人に、作者を思わせる新聞記者が昔の捕物ばなしを聞くという形式で、事件が再現されていきます。その語り口が70年以上たった今も少しも古くなっていないのに驚きを感じます。
収録作品◆「十五夜御用心」押上村の貧乏寺で、住職と納所と虚無僧二人の、四人の男が古井戸で死んでいた…。「金の蝋燭」両国橋の仮橋から金の蝋燭を抱えた女房が身投げした…。「正雪の絵馬」絵馬収集マニアの油屋の主人が、大宮八幡宮に奉納されている由井正雪の描かれた絵馬を盗み出した…。「新カチカチ山」砂村へ梅見に出かけた帰りの船の船底の穴から水があふれて沈没し、旗本と妾とお付きの女中二人が水死し、娘と女中一人が行方不明になった…。「河豚太鼓」湯島に参詣にでかけた葉茶屋の一人息子がかどわかされた…。「菊人形の昔」団子坂に菊見物に来て暴動に巻き込まれた英国人の馬が盗まれた…。「青山の仇討」佐倉から江戸見物に訪れた四人の男女が、青山の往来で仇討ちに出くわした…。「吉良の脇指」五百石の旗本と妾が、吉良上野介の脇差しで中間に殺された…。「歩兵の髪切り」元治元年に幕府が創設した歩兵隊の歩兵11人が髷を切られるという事件が発生した…。「二人女房」府中の六社明神の闇祭り見物にでかけた商家のおかみさんが、闇祭りの最中に行方不明になった…。
物語●神田三河町の岡っ引・半七が名推理を発揮して、江戸の怪事件を解決する、捕物帳のジャンルを開拓するシリーズ。68編から「深川澪通り木戸番小屋」の北原亞以子さんが、セレクションした、江戸情緒を今に伝える10編を収録。雑誌発表時の挿絵も収録。
巻末エッセイ:北原亞以子
人と作品:岡本経一
時代:嘉永二年~慶応元年、明治二十六年~三十年
(講談社大衆文学館・860円・95/5/20)
購入日:1997/3/21
読破日:1997/3/29
[絶版]